【平岡洋二 連載コラム】男子以上の指導! 熱血女子ホッケー監督・柳承辰

2020年10月01日 11時00分

2014年の日本リーグを制したレッドスパークス

【平岡洋二「アスリートの解体書」(28)】ホッケーつながりの話をもう少し。2012年12月、全日本女子ホッケー選手権大会を制した。9月の全日本社会人ホッケー選手権、10月の日本リーグに続き3冠達成となった。それまでの絶対女王ソニーから新女王時代到来の幕開けとなる一年となった。チームの名前は「コカ・コーラレッドスパークス」。広島市所在のホッケーの女子チームだ。

 その要因は、もちろん選手の頑張りや専用のホッケー場を造るといった会社のバックアップなど多々あるが、何といっても指導者、監督の存在抜きには語れないだろう。08年の就任以後、下位にいたチームを4位↓2位↓2位と優勝争いをするまでのチームに短期間で育て上げた。そして悲願の初優勝。

 柳承辰(ユー・スンジン)。私と彼の出会いは当時よりもさらに15年も前のこと。彼が韓国から日本の社会人チーム(表示灯)に移籍してきた現役選手時代(強豪韓国の代表選手)だ。そのチームは実質日本代表チームであったので前述したように私がトレーニング指導していたのが縁。そして、時を経て今度は指導者となって交流が再開した。

 熱い指導者だ。彼のそれまでのその熱い指導で選手たちの意識は高かった。意識の高さを表すエピソードを紹介しよう。トレーニングはハードだ。特にスクワットを中心とした脚のトレーニングは、高い意識なくしてはこなせない。重負荷を担いでつぶれるまで、いやつぶれてもパートナーの補助によって反復を強いるのだから恐怖感まで伴う。プロスポーツの男性の一流アスリートでさえ敬遠するほどなのだ。女性のトレーニング指導は数少ないから不安があったのだが、杞憂にすぎなかった。 

 そんなきついはずのトレーニングを彼女たちはほとんど未体験にもかかわらず当たり前のようにこなすのだ。それもうなり声まで張り上げて…。普段の厳しい練習の取り組みがうかがわれ、正直驚いた。

 一般的に女性はウエートトレーニングに対して拒否感のようなものを持っている。やれ筋肉がついて男のような体になるとか、やれ脚が太くなるから嫌だとか…。高い意識が3冠に導いたに違いない。

 しかし、14年の優勝後に柳監督退任。勇退? 解雇? はっきりとした説明は会社からは聞いていない。その後、日本リーグでの優勝はなく(2位↓4位↓2位↓4位↓5位)、3冠時の勢いは全く感じられない。指導者によってこれほど成績に差が出るものかとあらためて考えさせられた。ちなみに、これまた同様に私のトレーニング指導も監督退任とセットで契約解除となった。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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