巨人・菅野智之投手(30)が、29日の広島戦に先発し6回1失点。6―1の勝利に貢献し、日本タイ記録となる開幕投手からの12連勝を達成した。それにしても、コロナ禍で変則日程となった今季でも「無双状態」となれた要因は何なのか…。そこには菅野が行きついた、あの最強王者・ジャンボ鶴田をほうふつとさせる投球スタイルにあった。

 ここまで来たら最後まで…の決意だろう。試合後、連勝について問われた菅野は「毎回(連勝記録を)意識しながらマウンドに上がるのは意外としんどいですけど、そういう期待に応えるのもプロ野球の醍醐味だと思いますし、自分自身も負けないでシーズンを終えられるように頑張っていきます」と言い切った。

 軸足である右足に力をためるため、腕から始動する投球フォームへの変更、それによるフォークボールの精度アップ、そしてフルシーズン投げ抜くことを計算した「ペース配分」の撤廃――。好調を裏付けるポイントはいくつか挙げられているが、その根底にあるのが「相手を真っ向から受け止めたうえで抑え込む」というメンタリティーの変化にある。

 以前、菅野はシーズン前に〝メディア戦略〟とも言うべき策を用いたことがあった。実は新球でチェンジアップ習得を明言したとき、こんなことを明かしていた。

「それは一つの『作戦』でもあって。チェンジアップ、チェンジアップって新聞紙上で出ていると思いますけど、やっぱり他球団の打者やスコアラーは『あっ、今年の菅野はチェンジアップがあるのか』と。『どんなチェンジアップを投げるのか』と見ると思いますよ。(でも)もしかしたら投げないかもしれないですし、フォークも投げるかもしれないし…。それは別にいいんですよ。(それぞれが)勝手に意識してくれれば」

 いわゆる〝陽動作戦〟。手の内を明かさないことで、相手チームを惑わす方策も講じていた。
 しかし、近年の…特に今季の菅野で目立つのは配球、投球術に関しての「隠すつもりはない」「何も隠すことなく」といったフレーズだ。しかも、相手チームがあえて宝刀のスライダーに狙いを絞ってきたことについて問われると、直球とスライダーの二択になりがちな配球傾向を戒めつつも、こう語ったことがあった。

「みんなスライダーマークできていると思いますし、また(右打者も)踏み込んでくるんでね。それでもやっぱり投げていかないといけない球種なんで」

 相手が全力で狙い球を仕留めにきても、さらに上を行くフィニッシュホールドで倒す――。まさに「相手の技をすべて受け止めたうえで勝つ」ことを体現し〝史上最強〟ともいわれたプロレスラー・ジャンボ鶴田のスタイルそのものだ。

 ちなみに、原辰徳監督(62)が好きなレスラーの一人もジャンボ鶴田だ。死後に米国プロレス殿堂入りした際には、そのファイトスタイルについて「相手の技を全部、自分で受けるもんね。そして彼も全部、相手に与えるというかね。その辺の試合は忘れられない」と語ったことがあった。「胸と胸を突き合わせる」というフレーズを好んで使う指揮官だが、今季の菅野の投球こそそんな言葉がピタリとくる。

 無敗の12連勝。「1回負けてしまったらそこで終わりなので、そういうプレッシャーも楽しみながら投げていきたい」とも語った背番号18。〝完全無欠のエース〟はどこまで勝ちを伸ばせるか。