巨人の正二塁問題…8年前の寺内とカブる吉川尚

2020年09月30日 16時00分

吉川尚㊧は長らく〝空き家〟だった巨人の正二塁手になれるか。写真㊨は寺内

【赤坂英一 赤ペン!!】巨人ファンは昔から、“ヨソの子”より“ウチの子”が好きだ。そんなファンに「やっとウチの子がレギュラーの二塁手になれるかも」と期待されている選手が、4年目の吉川尚輝内野手(25)である。

 巨人にはセカンドで1130試合出場(巨人のみ)した仁志以降、不動のセカンドと呼べる生え抜きの選手がいない。383試合の寺内、343試合(巨人のみ)の脇谷らがレギュラーを務めたこともある。が、移籍組の小坂や木村拓、外国人のエドガーやゴンザレスと併用された時期が長く、仁志ほどの正二塁手だった印象は薄い。

 寺内はいいところまでいった。6年目の2012年にセカンドに定着し、13年は打撃でも急成長。CSで広島・前田健、日本シリーズで楽天・田中から本塁打を放って、レギュラーの座を盤石にしたかに思われた。

 ところが、巨人はその年のオフ、同じ二塁手の“ヨソの子”西武・片岡をFAで獲得。翌14年、寺内は故障もあって開幕に出遅れ、この年を境に第一線から遠ざかった。その後も返り咲くことはかなわず、結局18年にユニホームを脱いでいる。今季の吉川尚は、メキメキ頭角を現した12年ごろの寺内をほうふつとさせる。シーズン序盤は若林、湯浅、北村にスタメンを譲ることもあったが、守備に加えて、打撃で定位置を手繰り寄せている経緯がそっくりだ。

 吉川尚が22日の広島戦(東京ドーム)で今月2本目のサヨナラ安打を打つや、球団もTシャツやタオルなどの記念グッズを期間限定で発売。彼を新たなスター候補として売り出そうという姿勢がうかがえる。

 しかし、かつての寺内を知る巨人ファンには、ここで気がかりなことがある。今季、国内FAを取得したヤクルトのセカンド・山田哲の動向だ。昨オフ、契約更改で球団の複数年提示を固辞し、単年契約を選択。巨人・坂本と個人的に仲がいいことから、巨人に行くという観測が絶えない。

 巨人は昨オフ、ロッテからFA宣言した鈴木(現楽天)獲得に動いて失敗。あるチーム関係者によると「鈴木が獲れていたら、吉川尚は腰を痛めていたこともあり、今季は外野にコンバートすることも検討された」ともいう。

“ヨソの子”山田哲がFA宣言したら、巨人はまた手を挙げるか。それとも“ウチの子”吉川尚が残り試合でレギュラーの座を固めるか。優勝が決まるまで、巨人戦の隠れた見どころと言える。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。