巨人・阿部慎之助捕手(34)が9日、チームメートの長野や坂本らと自主トレ先のグアムへ出発した。

「普段のオフよりも休ませてもらったので『これからだな』という感じ。昨年のようにWBCもないし、より自分のペースを貫いて自主トレができるかなと。すごく楽しみ」

 成田空港で見せた阿部の表情は、侍ジャパンを背負った昨年のこの時期とは正反対の明るい表情だった。しかし、頭の中には今までの自主トレとは違う、壮大な“野望”があった。

「目標は山本昌さん。1年でも長く(現役を)やりたい。『(周囲から)もういいだろ』と思われてもね」

 中日の山本昌といえば、今年で49歳。しかも昨年の契約更改で、落合GMから50歳までプレーを続けることを認められた現役最年長選手だ。阿部は今年35歳と、まだまだ先は遠いが、その目は本気そのものだった。

 これまで現役を続けることに強い執着心を持たなかった阿部が“その気”になったのは、松井秀喜氏の影響もある。昨年末、テレビ番組の企画で米ニューヨークの松井氏を訪ねた際「巨人には慎之助が必要。長くやってほしい」と言われ「たとえ周囲が現役を引退していくことがあっても、そこを気にすることなく長くやってほしい」と伝えられた。それが今まで気づくことがなかった阿部のハートに火をつけた。

 その決意は本物で「大学時代に週5日やって飽きてしまった。それに鍛えたからといって打てるものじゃないから」と、極力行わなかった筋力トレーニングを再開するという。「この年になって、やらないとと思った。気持ちは元気。19歳くらい。だけど、体が落ちていくだろうし、おやじも言っていた。『気持ちは若くても体がついていかなくなる』って」(阿部)。鍛えるのは主に下半身。上半身はバットを振り込むなどして鍛え上げていく。

 今季の日本一奪回、そして「50歳まで現役」に向け、阿部の挑戦が始まった。