師・浜中元コーチが語る阪神・大山に流れる「4番の血」

2020年09月25日 11時00分

2019年7月、浜中コーチ㊧と大山悠輔

【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】あくまで数字の話ではある。それでも師匠超えは事実だ。阪神・大山悠輔内野手(25)が18日の中日戦(ナゴヤドーム)で大台クリアとなる20号、21号本塁打を連発した。昨年まで打撃コーチとして指導を仰いだ、元虎の4番・浜中治氏のシーズン自己最多本塁打数を超えた。

 大山にとって浜中氏は恩師であり、右打者で虎の4番を張った先輩。2019年には開幕4番に座ったが、生え抜き選手としては03年の浜中氏以来のことだった。全選手に平等であってしかるべきではあるが、師弟コンビの練習には、虎の4番としての思い入れが詰まっていた。

 当時の浜中コーチは「阪神で4番を打った経験がある人間だからこそ、言えることがあると思うんです。だから、大山には何でも言うようにしています」と語っていた。技術的なことはもちろん、グラウンド上やベンチ内での振る舞いなど、一挙手一投足に至るまで助言を惜しまなかった。

 昨季の矢野監督就任以来、阪神では明るさを前面に押し出すチーム方針を取っている。若手独特のノリも容認されているように見える。だが、浜中氏は大山にだけは明るさの中にも虎の4番としての品性を求め、時に叱ることもあった。
「みんな見てるんです。阪神の4番はどんな人間なのか。どんな時でも。ヒット打って出塁した時もそうです。どんな態度で塁上に立っているか。相手チームにもファンにも見られているんです」

 かつて、西武から巨人にFA移籍した清原和博氏は巨人の4番とは、と問われ「毎日がオリンピック(ほどの重圧)や」と冗談交じりに答えた。同じ質問を浜中氏にぶつけると、真面目に「阪神のその時代、時代をつくってきた打線での顔ですね」と返ってきた。こういった精神性を、大山にも伝えていたわけだ。

 昨季の大山は開幕から105試合で4番を打ったが、不調のためその座を明け渡した。今季は4番ではないが、30本塁打、本塁打王を狙える位置にいる。

 浜中氏はその姿をどう見ているのか。恐らく「まだまだこれから。もっとできる」と活躍を期待しているはず。実力、品格が備わり、大山が虎の4番を奪還する時が待ち遠しい。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。