【平岡洋二 連載コラム】今までで一番の仕事は「ミラクル三次」の快進撃

2020年09月25日 11時00分

再試合で強豪・瀬戸内を破った三次高校は勢いに乗り決勝へ(広島ホームテレビ提供)

【平岡洋二「アスリートの解体書」(25)】平成元年に創業し、以来プロアマ問わず「アスリート」のトレーニングに関わってきた。プロ野球選手やJリーガー・競輪・ボートレースなどのプロアスリート、オリンピック出場者や日本代表などのトップアスリートを含む多くの一般アスリートたち、社会人・大学生・高校生・中学生や小学生に至るまで。チーム単位から個人。競技も野球はもとよりサッカー・バレー・バスケット・ホッケー・ハンド・テニスに柔道・剣道・格闘技・陸上競技などなどあらゆる範囲に及んだ。総数は数千。カウント不能なほどだ。

 そんな中で「指導歴の中で何か一つと言われたら?」と、これまで何度か尋ねられた際「三次高校硬式野球部の快進撃」と答えてきた。金本知憲でも新井貴浩でもダルビッシュ有でもナショナルチームでもオリンピック選手でもない。甲子園出場だけでも開星(島根)・高陽東(広島)・崇徳(広島)含め10回は優に超えて指導しているのにだ。

 2018年5月23日付の地方紙「中国新聞」朝刊の「高校野球100回目の夏」と題した連載物に、05年選手権広島大会の決勝戦(三次対高陽東)の記事が掲載されている。「…プロ野球選手が通う広島市内のトレーニングジムに指導を依頼し、筋力を強化…」。もちろん我がトレーニングクラブ「アスリート」のことだ。

 前年夏の新チームスタート時は2年生14人・1年生2人のわずか16人。広島県北の中国山地沿いの人口5万人足らずの地方都市の県立の進学校の野球部なのだから。春の選抜大会であれば21世紀枠に推薦されていたに違いない。全88校が参加し、ノーシードながら9―2、8―2、7―1、1―0で勝ち進んだ。5戦目の準々決勝では甲子園出場経験校の私学(瀬戸内)と対戦し、リードしていたにもかかわらず雨天ノーゲームとなり、翌日の再試合でも勝ったあたりから、周辺が騒がしくなったのをよく覚えている。

 スポーツ紙も1面で「ミラクル三次」を報じ、ローカルテレビなどでも取り上げられていた。対県立広島工業(春夏計10回甲子園出場)の準決勝戦もサヨナラホームランで勝ち上がり決勝戦へ。こうした快挙の裏には将来プロ野球選手になるようなエースで4番なんて選手がいたりするものだがそんな存在もなかった。(注…実は大学卒業時に育成選手としてプロ野球に指名された3年生がいたが、彼は故障明けで勝ちゲームの終盤に1回だけ温情出場したのみ)

「ミラクル・奇跡・旋風」などの字が躍った。結果、高陽東に0―5で敗れたものの、30年にも及ぶアスリートの歴史の中でも一番と言えるしてやったりものの快挙だった。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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