【平岡洋二 連載コラム】テレビの「本塁打量産トレ」を見てショック

2020年09月18日 11時00分

公立校並の環境ながら「開星方式」で甲子園出場の常連校に

【平岡洋二「アスリートの解体書」(23)】もう2、3年前になるだろうか、あるNHK特集を見た。2017年の全国高校野球選手権大会で大会最多本塁打数を更新(06年の60本→68本)したことの要因を探ることをテーマに「高校野球の“怪物”たち最多本塁打なぜ」と題した30分番組だった。技術的な進歩や戦術の変化など様々な要因を取り上げていた。

 また、食事やトレーニング方法の改善に取り組んだ結果をゲストのプロOBや強豪校の指導者を交えて紹介していた。夕食の大量の炭水化物摂取など誤った方法なども紹介されてはいたが、ウエートトレーニングに積極的に取り組むなど、私が何十年も前から島根・開星高で実践する「開星方式」だったので少なからずショックだった。動きが少なく、かつ継続的でない野球という競技の特性をにらんだ体づくり。これまでのランニング偏重の旧来のトレーニング方式を見直し、体重増加(筋量増加)によるパワーアップで飛距離やスイングスピードアップを図るという内容だった。1番打者から9番打者まで本塁打量産の結果の要因だと結論付けていた。

「開星方式」。プロテインなどのサプリメント摂取はもとより、食事の重要性を認識させ個々の目標体重を設定。ランニングは走塁練習など必要最低限にし、ウエートトレーニングによる体づくりをプラスアルファの付け足しではなく、練習の柱の一つとして位置付けてほぼ毎日実施。トレーニングとしてのランニングは行わないなどなど。プロ野球選手輩出数わずか5人が示すように、甲子園出場回数13度(夏10回・春3回)の割には少ない。

 つまり強豪校と言われる学校と比べ地域性や特待生制度等の競争力が低いため、有望な中学生を確保できないという現実を考慮した最善の策なのだ。有望な県外選手の勧誘など皆無で大半がごくごく普通の地元選手。それも各学年20人前後の部員数で私学とはいえ公立高校並み。いや生徒数も一学年150人弱(全校500人未満)で、公立志向の高い地方ゆえ公立以下かもしれない。それでもいつの間にか甲子園常連校と言われるまでになったのは、その「開星方式」も一因だと提唱者としては自負している。それがNHK特集などによって一般的になってしまうと危機感を覚えた次第だ。

 今年、開星野球部は体罰や部費横領など不祥事の連続で監督を更迭。野球部さえなかった小規模校を甲子園出場常連校に育て上げた初代監督の野々村直通氏が復帰した。原点回帰で本来の「開星方式」も復活だ。一貫性のない指導や体罰等で迷走状態に陥り、15年ぶりに卒業までの3年間で甲子園出場のない学年を出してしまった。余談だが、夏の甲子園出場3大会連続で対戦相手(11年・日大三、14年・大阪桐蔭、17年・花咲徳栄)が優勝している。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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