急転直下の〝阿部緊急昇格〟 元木ヘッド離脱すら好機に変える原監督の千里眼

2020年09月17日 05時15分

 まさかの緊急昇格だった。巨人・阿部慎之助二軍監督(41)が一軍ヘッドコーチ代行を務めることが決まり、16日の阪神戦(東京ドーム)からベンチ入りした。当面の間、虫垂炎の手術で入院を余儀なくされてしまった元木大介ヘッドコーチ(48)の代役というわけだが、空位のままにしておく選択肢もあった中、原辰徳監督(62)はなぜ、あえて阿部二軍監督を一軍に呼び寄せたのか。その〝真意〟は――。

 何とも重厚感あふれる光景だった。この日からベンチで原監督の傍らに立ったのは愛弟子の阿部二軍監督。この日「虫垂炎」の手術を行った元木ヘッドがそのまま入院し、不在となる期間を阿部二軍監督が代行することとなった。

 阿部二軍監督にとっては急展開の一日となった。二軍戦で指揮を執る予定だった神奈川・平塚から、原監督の連絡を受けて東京ドームへ急行。試合前の全体練習が終わる直前に到着し、首脳陣とコミュニケーションを図って試合に突入した。原監督は阿部二軍監督を緊急招へいした理由について「最善策」としながら「ヘッドコーチ代行という形ですから、それはもう思い切って。彼は選手個々もチームも良く知っているわけだから」と背中を押した。

 ただ、昨季はヘッドを置かずにリーグ優勝。ヘッド不在といっても、あわてて代役を呼び寄せる必要はない。百戦錬磨の指揮官ならば、今回も二軍監督に据え置いたままペナントレースを戦う選択肢もあった。それでも、あえて一軍の舞台、それも自らの傍らに呼び寄せたのは、阿部二軍監督の参謀としての能力を試す狙いがあるとの見方もある。

 1対1で直接、提案や進言をしてくる元木ヘッドの手腕について、原監督は今年の春先の時点ですでにこう絶賛していた。「彼は迷いというものがない。何回かはあったかもしれないけど、基本的に『こういうふうにします』という意思から入るから、非常に結論が出やすい。大したものですよ」

 一方の阿部二軍監督には、選手の育成と戦力の底上げに重点を置いた指導を求めてきた。ただ、阿部二軍監督は原監督自身が「類いまれな野球選手としての経験を持っている。選ばれた指導者になれる人だと思う」と語ったほど未来の監督候補の一人として見ている。いずれ巨人を率いるならば、作戦の立案から選手起用…と幅広い知識と経験を培う必要がある。

 その点では、阿部二軍監督は未知数。今回は元木ヘッドの離脱というチームの緊急事態を逆手に取り、阿部二軍監督にまず参謀役としての体験をさせようとしているというわけだ。

 当の阿部二軍監督は〝ヘッドデビュー戦〟を終え「選手交代のタイミング」などの難しさを痛感したといい、試合後には指揮官から直々に「思う存分、慎之助らしさを出しなさい」と声をかけられたという。「『らしさ』が何か(まだ自分では)良く分からないので、勝つためにいろんな助言を授けられたら」と前向きな言葉を残した。

 今後も試行錯誤は続くだろう。だが、指導者としてさらなるステップアップにつながることは間違いない。それにしても…。ヘッドコーチの緊急離脱さえも瞬時に有効活用してしまう原監督、抜け目がない。