原監督が日本一へ学ぶべき長嶋流「マインドコントロール」

2020年09月15日 16時00分

1994年シーズンは現役だった原と長嶋監督㊧

【赤坂英一 赤ペン!!】今年の日本シリーズは絶対負けられない。必ず日本一になる――。巨人・原監督の胸の内はいま、そんな執念にも似た思いでいっぱいのはずだ。

 11日のヤクルト戦に勝って、レギュラーシーズンでは川上哲治元監督を上回る球団史上最多の1067勝を記録した。が、完全に“川上超え”を果たしたとは、原監督も思っていないだろう。川上氏は11度リーグ優勝した年すべてで、1965~73年のV9時代を含む日本一を達成。これは、いまだに破られていない球界最多記録だ。

 一方で、原監督は8度リーグ優勝したものの、日本一は3度だけ。日本ハムに勝った2012年以降、日本シリーズは2度連続で敗退。しかも、昨年はソフトバンクに初戦から4連敗し、1勝もできずに終わってしまった。

 今年のシリーズでもふがいない戦いをして敗れれば「またか」「やっぱりか」とファンに言われるのは火を見るよりも明らかだ。90年、貯金46、2位に22ゲーム差で優勝した藤田監督はシリーズで、森監督率いる西武に0勝4敗。「シリーズで1敗するたびにシーズン10以上の貯金が消えていきました」と嘆いた。

 同じ轍を踏まないため、原監督はどのような手を打つのか。そこで思い出されるのが、藤田監督4連敗から4年後の94年、同じ森西武とぶつかった長嶋監督の“マインドコントロール”だ。

 戦前の予想で西武有利と言われる中、長嶋監督は何度も「ウチが4勝2敗で勝つよ。もう決まってるから」と“予言”。マスコミへのリップサービスだけでなく、選手やコーチにもミーティングでこう繰り返していた。

「このシリーズは4勝2敗で勝つ。ホームの1、2戦で2連勝したら4勝1敗もあるぞ。1勝1敗なら4勝2敗だ。たとえ最初に2連敗しても最後は4勝3敗で勝つ!」

 これを人づてに聞いた森監督は「何を根拠に言っているのか」と首をかしげていた。が、当時の中畑打撃コーチは「長嶋さんはああいう予言を続けることでオレたちは勝てるという雰囲気をつくったんだよ」と証言している。

 結果はご存じの通り、長嶋予言が見事に的中。この予言は2000年、王監督率いるダイエーとのONシリーズでも繰り返され、また4勝2敗で巨人が日本一となった。

 レギュラーシーズンで川上超えを果たした原監督が、シリーズでミスターを超える神がかり采配を見せられるだろうか。要注目である。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。