【平岡洋二 連載コラム】愛すべきキャラ・サッカー久保竜彦の忘れられない思い出

2020年09月11日 11時00分

広島のレジェンド・久保(左)と新井は同級生で仲良しだ

【平岡洋二「アスリートの解体書」(19)】前述したとおり日本サッカー界ではウエートトレーニングへの関心はあまり高くない。それでも世界を意識した志の高い選手たちとの関わりが少なからずある。タイムリーな特筆ものの選手は現日本代表監督の森保一(元サンフレッチェ広島)か。サッカーは指導者になるためには資格が必要となる。代表監督やJリーグの監督ともなれば、段階を踏んでより上級の資格を取得する必要がある。

 彼はコーチングスクールを現役時から受講しており、ある時そのコーチングスクール受講で脚のけがでトレーニングに支障が生じたことを思い出す。Jリーグ出場にも影響したほどだった。他にも日本代表クラスでは最も熱心に通った上村健一やGKの下田崇、森崎兄弟など結構多くのJリーガーとも関わっている。中でも最も印象に残っているのは「ドラゴン」こと久保竜彦だ。といってもトレーニング的にではない。現役も引退していてもう時効だろうから話そう。

 20年も前の話。オフに「アスリート」主催でパーティーをやっており、多い時には参加者が200人を超え、結構盛大に開催していた。主役はメンバーのトップアスリートたち。プロ野球選手、JリーガーやバレーのVリーグの選手も…。その会場に年間の優秀選手としてゲスト参加したのが当時サンフレッチェ広島に所属していた久保竜彦だった。私とは初対面。久保の表彰も拙い「ガンバリマス」インタビューで和やかに進みパーティーは滞りなく盛況に終わるはずだった。

 ところが、帰ったはずの久保が2次会会場に「ドラゴン」になって現れたことから、軌道がズレだしたのだ。サッカー好きの参加者が久保を連れ出して酔わせてから2次会会場に連れてきたのだった。お姉ちゃんをつかまえては「ワシの酒が飲めんのか!」。上村や下田に「あいつ何とかしろ。帰らせろ」と指示したので解決かと思いきや、しばらく経過した後、飲酒運転で交通事故をしたとの連絡があって大騒動に。奥さんを呼んで運転させて帰らせたはずだったが、本人が譲らずに運転し、止めていた駐車場の壁にぶつけたとのことだ。

 相手もなく大した事故ではなかったが、何より本人が酔っ払っており、手に負えなくなって管理者が警察に通報、新聞記事になり、翌日はテレビでも報道される羽目になったというお粗末な話。しかし、人生何がきっかけで動きだすか分からない。その事故後、久保が「アスリート」メンバー入り。以後20年も親しい付き合いとなった。実に愛すべきキャラクターの持ち主で、同級生の新井貴浩とも親しくなっている。サッカー少女として有名だった久保の長女が熱烈な新井ファンで「アスリート」で引き合わせたこともある。その久保、今は山口県で塩作りをしている。現役時代さながらの何とも予測不能な摩訶不思議な男だ。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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