精も魂も尽き果てたか――。阪神は7日の巨人戦(甲子園)に2―3で敗れて3位転落。痛恨の負け越しでライバルに8・5ゲーム差と大きく引き離された。最短10日にも自力Vの可能性が消滅する。選手たちの〝ガソリン切れ〟も深刻な状況で、15年ぶりのリーグVは極めて厳しくなった。

 点差以上の実力差を認めざるを得ない惨敗だった。阪神は負けられない一戦に防御率0点台と抜群の安定感を誇った左腕・高橋遥人(24)を今季初の中5日で投入。6回で9安打されたものの、自責1点とまずまずの投球を見せた。それが3失点で白星につながらなかったのは、野手が失策で足を引っ張ったからだ。

 0―0の3回一死満塁で松原の浅い中飛を捕球した近本はタッチアップを阻止すべく本塁へ返球するも、これが大きく上にそれてしまい、一度は自重した三塁走者がそれを見て生還。4回には先頭・岡本の遊ゴロを木浪が後逸し、一死二、三塁からは大城の浅い中飛で再び近本が〝やらかし〟てしまう。同じミスを恐れたのか、明らかに弱い送球で岡本にホームインを許した。試合後に矢野監督が「きょうは近本で負けた」と思わずこぼしたほどで「近本自身が成長して、これからどうチームを勝たせていくか」とフォローしたが、不動の中堅手の〝らしくないプレー〟は勝敗を分ける結果となった。

 戦犯に名指しされた近本は球団を通じて「大事な試合で自分のミスで失点してしまい、本当にやってはいけないミスをしてしまいました。あのプレーでチームが負けてしまったということをしっかり受け止めて、同じことを繰り返さないように、しっかりやっていきます」とコメントしたが、まさに覆水盆に返らず。巨人が両リーグ最少の16失策なのに対し、阪神は同ワーストの51失策。その差が試合内容に表れた格好だ。

 ならば「練習するしかない」のが、プロの世界でも掟だが、むやみに追い込めない猛虎ナインの現状が先行きに暗い影を落としている。関係者によると、8月中は行っていた一軍ベンチ入りメンバーの「早出・居残りでの特守・特打」の指名練習、いわゆる〝強制〟を今月に入って取りやめているという。

 異例の過密日程となっている影響もあるのか、スタメン出場している野手陣のほとんどが満身創痍の状態。直近の試合で出た課題を補うための補習ができるコンディションにある選手はごく少数なのが現状という。近本もヒジに慢性的な痛みを抱えながらプレーし続けており、レギュラー格の選手のほぼ全員が、コンディションに何かしらの懸念材料を抱えている。

 まだ54試合、巨人との直接対決も11試合を残しているが、悲願の優勝に向けて現実的には崖っ縁に立たされており、かつ徳俵で踏ん張るだけのスタミナもない。技術以前に体力不足では、奇跡を望むのも難しそうだ。