先発に中継ぎのパットンを立てた敵将・ラミレス監督の〝奇策〟を、あっさりと叩きのめした。初回に1点を先制されたが、直後の攻撃ですぐさま3点を返して逆転。2回には松原にプロ1号となる3ラン、岡本には2ラン、坂本にも2ランが飛び出すなど打者14人、計8安打で大量10点を挙げ、早々と試合を決めた。

 試合後の原監督は序盤の大攻勢に「いやあ、そうはないですよね」と思わずうなり「よく集中して。今日はリリーフの人が先発しましたけど、集中力は良かったと思いますね」と攻撃陣をたたえた。試練の13連戦も絶好の3連勝スタート。「特に今日のゲームはとても大きな位置づけの試合だと思います。今日の勝利は非常に大きい」とえびす顔だった。

 2位・阪神とのゲーム差は7・5のまま変わらなかったが、それでも大きなアドバンテージだ。首位を快走できる最大の要因は原采配にあるが、ファームとの意外な〝連係プレー〟も一軍に刺激をもたらしている。それが、阿部二軍監督による「鬼采配」で「実績や経歴にとらわれないやり方は、間違いなく現場にいい緊張感を生んでいる」(球団関係者)という。その代表格は澤村拓一投手(32)と陽岱鋼外野手(33)の〝三軍降格〟だ。

 一軍で活躍の場を失った澤村は7月下旬に登録を抹消され、二軍でも結果を残せず、阿部二軍監督は8月中旬にとうとう三軍降格を命じた。現在は二軍に復帰しているものの、セーブ王のタイトルを獲得した実績のある選手をケガ以外の理由で三軍まで落とす決断はチーム内に大きな波紋を広げた。

 ただ、三軍降格劇は剛腕だけではなかった。8月10日に二軍落ちした陽岱鋼も8試合で15打数1安打と低調な結果に終わると、2試合ながら三軍戦へ…。実績があろうが、FA戦士だろうが、厳しいスタンスに徹するのが阿部流だ。そもそも、阿部二軍監督は二軍を完全な「育成の場」とすることを理想に掲げており、実績組や中堅選手には「一軍に行きたければ、数少ないチャンスで結果を残してくれと。試合に出たいなら『三軍に行ってくれ』って言うよ。それぐらい徹底しないと(若手は)育たないから」と予告はしていた。阿部二軍監督も重い決断だったに違いないが、有言実行で〝三軍送り〟にした衝撃は計り知れないものだった。

 同時に、一軍には「二軍に落ちたら、どこまで落とされるか分からない」「意地でも結果を残して一軍にしがみつかないといけない」といった危機感が芽生えたのも事実。澤村、陽岱鋼の三軍降格が一軍に追い風を吹かせた格好だ。

 今季最多得点にも「1戦1戦でね」と即座に引き締めを図った原監督。それを下支えする阿部二軍監督がかもし出す緊張感も、原巨人の快進撃を生み出している。