上々の復活登板だ。巨人の新助っ人エンジェル・サンチェス投手(30)が2日のDeNA戦(東京ドーム)で約1か月半ぶりに戦列復帰し、6回1失点の好投で4勝目(2敗)を挙げた。13連戦の真っただ中で先発の頭数が1枚増えたことはチームにとって追い風。しかし、サンチェス個人としては春先にかました〝うっかり失言〟からの信頼回復は道半ばだ。

 久しぶりの勝ち名乗りだった。初回こそ29球を要したが、尻上がりに調子を上げて6回を91球、被安打1でまとめた。チームも3―1で勝利し、サンチェスは「とてもいい気分です。これから貢献できるように頑張りたい」と笑顔を見せ、原監督も「100球以内で6イニングを1点に抑えた。この結果がすべてだと思いますね。先発陣の中に彼が一人加わったのは大きいと思いますね」とカムバックを喜んだ。

 疲労も蓄積する後半戦に入っての13連戦。助っ人の復帰は朗報となったが、そもそもサンチェスに求められていたのはエース菅野と並ぶ両輪の活躍だ。原監督をはじめ、球団側の期待の大きさは契約面にも表れ、異例の2年契約で今季推定年俸3億4000万円。日本での実力が未知数にもかかわらず菅野、坂本、丸に次ぐチーム4位の〝破格条件〟だった。

 ただ、本人は至ってマイペース。昨季、韓国リーグで17勝を挙げるも、来日直後から特に苦慮したのがNPB球への順応だった。手にマウンドの土をつけるなどの工夫を凝らしてはいたが、春季キャンプが終わり、本格的なオープン戦に突入してもサンチェスはノラリクラリ…。そして当初予定された3月20日の開幕が迫った同7日のオリックス戦(京セラドーム)後の発言が球団内をピリつかせた。

 4回途中4失点(自責2点)で降板したサンチェスは「(日本の球は)ちょっと滑る。握りづらいというか…。(縫い目が)自分の感覚では低い。ここぞという時に制球しづらくなる」と相変わらずの悩みを打ち明け「(慣れるまでに)時間を要するかな、と。夏場までには完璧になっているのではないか」と語ったのだ。

 その後に新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕は延期となったが、球団関係者の一人は「そんなノンキなことを言われてもねえ…。キャンプから時間は十分与えられていたはず。夏場なんて遅すぎるよ。開幕から先発ローテの柱として活躍してもらわないといけないのに…。そのために来てもらったんだから」と目をつり上げていた。

 結果的にシーズンは3か月遅れの6月19日に開幕。サンチェスはさらなる調整期間を得た形となったが、7月下旬に右肩の違和感で離脱するまでローテを守れたのは5試合だけだった。

 チームは4連勝で今季最多の貯金16に。2位阪神とは今季最大の7・5ゲーム差に広げた。首位を独走できているのも開幕から無傷の9連勝中の菅野、エース級の活躍で7勝を挙げている20歳の戸郷がいてこそだ。サンチェスが信頼を取り戻せるかは、今後の巻き返しにかかっている。