阪神・藤川球児投手(40)が1日に兵庫・西宮市内で引退会見に臨み、ユニホームを脱ぐ決断に至った経緯とチーム、ファンへの感謝の言葉を語った。「分かっていても打てない」と形容された火の玉ストレートを武器に、長年虎ブルペンを守り続けてきた藤川の引退は寂しい限りだが、今後はどうなるのか。球団内外からは早くも将来的な監督就任を望む声が噴出している。

 1時間を超える引退会見、一つひとつの質問に丁寧に応じ続けた藤川が、何度も繰り返し強調したのが「残った選手たちが成長してくれなければ巨人には勝てない」という「対巨人」についての思いだった。

 巨人戦とは特別な舞台だったかと問われると「当たり前ですね」と即答した上で「これは誰に何を言われても絶対に今日、言わないといけない。僕は阪神の先輩方から伝統を預かってつながなきゃいけないんですよ。西対東、東対西。(阪神巨人戦は)スポーツだけの世界じゃない。(生え抜き選手として)阪神に入ったときにそういう教育があったから」と、宿敵打倒への強い思いを明かした。

 今季の阪神はここまで巨人に2勝8敗と苦しい戦いが続き、ファンやOBも歯がゆい思いをしているところ。そんな藤川だからこそ、将来の指導者としての期待も高まっており、阪神OBを中心にチーム内外から「将来の監督就任」を望む声が続出しているのだ。

「球児は強烈な反骨精神と強靭な意志の持ち主。巨人打倒に執念を燃やした野村(克也)さんや星野(仙一)さんの薫陶も受けている。巨大な敵に立ち向かう闘将タイプの指揮官になってくれれば」(球団OB)

「藤川は自分にも他人にも厳しくすることができる、今や数少ない昭和型の選手。入団当時ガリガリだった18歳の少年があそこまでたくましく成長した背景には、相当な努力と節制があったと思う。実績も申し分ないし、彼の人間性なら必ず厳しくも優しい良き指導者になってくれるはず」(球団関係者)

「毎日ブルペンで肩をつくらねばならないリリーフ業は過酷な職場。そこを主戦場に15年以上戦い抜いてきた藤川には、彼にしかない数々の引き出しがあるはず。自身の経験を踏まえた上で選手に寄り添った指導者になれると思う」(球団OB)

 今後について藤川は「また新しい夢を見つけたい。この後もっと面白い人生を送りたい」と語るにとどめたが、コーチを経ての将来的な監督就任には、現時点で何の障害もなさそう。〝火の玉指揮官〟として伝統の一戦に臨む姿を今から期待されている。

 もちろん、その際に背負う背番号は「22」だろう。こちらも球団OBからは「阪神生え抜きの投手で、彼ほど記録にも記憶にも残る投手が何人いただろうか。彼の実績に敬意を示すことも含め、当面は背負うにふさわしい選手が現れるまで『準永久欠番』にしてほしい」との声が出ている。

 ちなみに阪神の永久欠番は藤村富美男氏の「10」、村山実氏の「11」、吉田義男氏の「23」の3つのみ。現在は功労者が退団した際には「準永久欠番」扱いとして当面の間〝空き番〟とした後、本人が指導者として復帰した際などに再びつけられるようになっており、金本知憲氏が指導者として「6」を再び背負っている。

 伝説の守護神の引退は寂しい限りだが「火の玉伝説」には、まだ続きがある。現役生活に別れを告げることになっても、聖地・甲子園で、指導者としての新たな伝説を期待したい。