首位を快走するソフトバンクは29日の日本ハム戦(ペイペイ)に3―0の零封勝ちで、今季初の7連勝を飾った。左ふくらはぎを痛めて戦列を離れていたマット・ムーア投手(31)が一軍復帰戦で待望の来日初勝利。故障明けで90球の球数制限が設けられていた中で、5回4安打無失点の好投だった。

 5回二死、球数は89。交代を告げるためマウンドに来た森山投手コーチに続投を志願した。最後は95球目のチェンジアップで7個目の三振。「最後のアウトをしっかり取れたのでよかった」と初白星の権利を得た。

 メジャー通算54勝を誇る実力者は、実生活から謙虚で柔軟だ。それはマウンドでも変わらない。この日はチェンジアップで5つの空振り三振を奪った。150キロを超える真っすぐと切れのあるカットボールが得意球。本人も「普段の僕のスタイルならもう少し真っすぐとカットが多いと思う」と言う。スタイル変貌の理由をこう明かした。

「(今季公式戦)最初の西武戦では自分で(配球を)考えて首を振ったりして投げていた。でも、次の日本ハム戦から甲斐のリードをもっと信じて投げようと決めた。僕は今年が(NPB)1年目。日本の打者の特徴は彼の方がよく分かっている。今日も甲斐のリードを信じて、ミット目がけて投げるだけだった」

 3回に相手の失策絡みでもらった得点を守りきって勝利投手の権利をつかんだ左腕。零封リレーの中継ぎ陣に「いつも通り抑えてくれた」と丁寧に謝意を示し、ウイニングボールを大切に受け取った。

 郷に入れば郷に従え――。「こういう時期に日本に来てプレーできるのは奥さんのおかげ」とも言った。まだ感謝を伝えたい人がいるといった様子で、最後は報道陣にまで丁寧にお辞儀をしたムーア。技量も度量もでかい。