西武の悩めるMVP・森友哉捕手(25)が27日の日本ハム戦(メットライフドーム)のスタメンを外れ、7回の守備から途中出場した。

 先発マスクはドラフト5位ルーキーの柘植。その柘植のプロ1号ソロなどもあり、チームが6―4と逆転に成功した7回からマスクをかぶった森だが、結果はセットアッパー・ギャレットが3安打3四死球3失点と打ち込まれ、一時逆転を許した。

 今月2度目の6連敗を覚悟した9回一死満塁で山川のサヨナラ2点打が飛び出し救われた。しかし、自らのリードに責任を感じていた森は試合後、人目もはばからずグラウンド上、そしてベンチで号泣した。

 守備の負担が重い今季の森は自慢のバットでも打率2割6分1厘、5本塁打、20打点と低空飛行を続けている。打撃不振の大きな要因は今年も止まらない投壊。その一翼を担っているリード面での悩みも深い。ただ、森が捕手として現状のトラブルに対応できないのはある意味で仕方のない部分もある。

 そもそも、森にとっての捕手はその打力を生かすために“与えられたポジション”だ。それまでチームの正捕手だった炭谷が2018年シーズンの起用法に不満をため、オフのFA交渉で「森との正当な競争」だけを求めて球団と交渉。しかし「現場の采配に口は出せない」と却下されると13年在籍したチームからの退団を決意し、巨人へ移籍。結果、10年オフの細川に続き繰り返されたこの主戦捕手の流出が、捕手としての森の育成に暗い影を落としている。

 チーム関係者は「修羅場をくぐらず正捕手になった友哉には酷な状況。ウチに多くいる一軍半クラスの投手をなだめすかして何とか勝ちをつけられるノウハウもなければ、こんなに悪い状況のチームを立て直せる経験も蓄積もない。そこは経験がものをいう部分で、もしギン(炭谷)がそばにいたら見て学ぶ部分も、一緒に悩んで解決法を探っていく作業もできた。今こうなってみると、あの年出て行った3人(菊池、浅村、炭谷)の中で一番過小評価されていたのはギンかもしれない」と漏らす。

 一人前になるまで膨大な時間と経験が必要な正捕手というポジションは将来、監督や参謀になる人材の宝庫でもある。正捕手はその球団の財産だけに“炭谷ロス”の大きさを今さらながら痛感している。