巨人のエース・菅野智之投手(30)の周辺がにわかに慌ただしくなってきた。25日のヤクルト戦(神宮)に先発し、7回2失点の力投を見せると、自ら満塁走者一掃の適時二塁打を放って8―4での勝利に大貢献。球団82年ぶりとなる開幕投手からの開幕9連勝を飾った。チームの連敗を3で止めた〝無双右腕〟に球団はタイミングを見極めたうえで、ポスティングシステムでのメジャー挑戦への意思確認を行う動きが出てきているという。

 勝負を決めたのは自らのバットだった。勝ち越した直後の7回二死満塁、菅野は左中間へ3点適時二塁打。投げては7回5安打2失点の力投で開幕からの9連勝を決めた。

 初回に2失点も、逆転勝利で過去1勝6敗の〝鬼門〟神宮を突破。開幕9連勝は球団では1966年の堀内恒夫以来54年ぶり、開幕投手としては1938年のスタルヒン(11連勝)以来となる82年ぶりの快挙。それでも右腕は「とりあえずホッとしているが、喜べる内容ではない」と初回の2失点を悔やんだ。

 粘投でチームの連敗を3で止めたエースに原監督は「やっぱり最初の2点を取られてがっかりすることなくね、フラットな気持ちの中で挑んでいくというのが良かったと思いますね」と最敬礼だった。

 早くも4度目の連敗ストッパーとチームに貢献。向かうところ敵なしの背番号18に対し、水面下で動きが生じつつあるという。「球団としてタイミングを見て、本人にポスティングの意思を確認するそうです。山口オーナーは菅野に対し〝1年を棒に振っている〟と入団時の経緯に配慮する意向を見せています。球団としても本人がどうしたいのかを尊重する方向です」とチーム関係者は明かした。右腕の貢献度を考慮し、海外FA権を取得予定の2021年にはこだわらないという。

 巨人は昨オフ、球団として初めて山口俊(現ブルージェイズ)のポスティングによるメジャー移籍を容認。山口オーナーも昨年11月「海外FA権を取得して挑戦というのが基本であるのは従来と変わらない」と前置きしつつ「今後、個別のケースに関しては検討していく余地は出てくるのかな」と柔軟な姿勢を見せていた。

 菅野自身は17年12月に「絶対的な力をつけて文句なく行けるようにしたい」と将来的なメジャー挑戦を表明。原監督は昨年11月、ポスティングについて「時代の流れの中で、それを頑なにダメというのではなく、どこかに、選手にもあれだけこう頑張ったから、希望が通ったんだという、特例というのはあってもいいと思う」と話しており、チーム内に障害はない。

 もっとも唯一の懸案材料は受け入れる側のメジャーを取り巻く情勢だ。「コロナの影響もあるし、果たして本人がどう考えるか…」とフロントの一人が話すように、コロナ禍により今季のメジャーは無観客による60試合のみ。ほとんどの球団が経営悪化が避けられず、来季も4月1日開幕の日程こそ発表されているものの、不確定要素は多い。

 現行のポスティングでの譲渡金は山口で最大約1億8500万円、筒香嘉智(現レイズ)で約2億6400万円と一時期に比べれば〝お手頃〟。それでもコロナ禍の現状を考えれば、入札球団がどれほど出てくるかどうかは未知数だ。

 このまま自身が連勝を続け、チームの日本一を達成できれば、菅野にとって〝やり残し〟はなくなる。連勝記録の伸び具合と合わせ、エースの動きから目が離せない。