〝鬼門〟を自力で突破して見せた。巨人・菅野智之投手(30)が、25日のヤクルト戦(神宮)に先発し、7回2失点の粘投で無傷の開幕9連勝を挙げた。これで斎藤雅樹氏を抜き、1938年に11連勝したスタルヒン以来、82年ぶり2人目の快挙となった。

 4度目の連敗ストッパーを託されただけでなく、この日の舞台はレギュラーシーズンで通算1勝6敗と〝鬼門〟といわれる神宮のマウンド。調子が良くなかっただけでなく、早いカウントから打ってくる相手のペースにもはまってしまい、先頭打者から3連打で1点を献上。4番・村上を併殺に打ち取るも、続く雄平にも痛打され計2点を失った。しかし、ここから打者心理の裏を行く配球にガラリと変えたことで修正に成功。2回以降は無失点に抑えた。

 試合後、菅野はこの場面を振り返り、こう語った。「初回にパンパンって点を取られて、『やっぱり厳しいのかな』って正直(思いが)よぎったんですけど、でもそこに打ち勝つだけの準備を1週間してきたつもりでいましたし…。気持ちが切れそうになったんですけど、うまく2回以降は修正して、結果的に勝てたっていうのが、すごく自分の中では財産になりました」

「やっぱり厳しいのかな」とはどういうことなのか。やはりエースの中にあったのは、神宮との相性の悪さだった。報道陣にそこをズバリ問われた菅野は「皆さんがそう言って騒ぐんで…」と前置きしつつも「やっぱ嫌な印象ですよ」と続けたのはこんな言葉だった。

「自分の中では、もちろんノーヒットノーランをしたりとか、レギュラーシーズンでも完封したこともある球場ではあるんですけど…神宮のヤクルト戦ってなると、ヤクルトの選手も、なんか僕は違うような感じもして。球場の雰囲気も味方しているように感じるので」ネガティブな意識、折れそうになった気持ちを奮い立たせ、配球を大胆に変える勇気を体現したことで見事つかみ取った白星だった。

 開幕投手から積み重ねた9連勝。この段階で振り返りを求められた菅野は「全体的に振り返ると満足かもしれないですけど、1試合1試合振り返るとまだまだ改善する余地というか、よくなれるというのが僕自身、期待がある。話的には矛盾しているかもしれないですけど、結果には満足してますけど内容には満足していないって感じですかね」と表情を引き締めた。この意識がある限り、まだまだ記録は伸びそうだ。