巨人・宮本コーチの涙は〝掟破り〟か…原監督は「勝負師にはいらない」

2020年08月20日 07時15分

メルセデス(右)を思って涙を流した宮本コーチだが…

 まさかの「もらい泣き」だ。巨人は19日の阪神戦(東京ドーム)に8―0で快勝。先発投手が2回で緊急降板する大ピンチにも、好調の救援陣が無失点リレーで乗り切った。まさにチーム一丸でもぎ取った一戦では、ベンチ内で繰り広げられた異例の光景も注目を集めた。宮本和知投手チーフコーチ(56)が試合中のベンチで流した「涙」だ。人情味あふれるワンシーンではあったが〝勝負の鬼〟原辰徳監督(62)の哲学では…。

 試合は序盤からアクシデントに見舞われた。先発したメルセデスの左ヒジに異変が生じ、2回無失点で降板。その後をプロ初勝利をマークした田中豊ら6人のブルペン陣が得点を許さず、最後までバトンをつないだ。

 打線も岡本と丸に一発が飛び出し、計14安打の猛攻。大いに盛り上がったベンチでは珍しいシーンもあった。メルセデスの症状悪化を懸念した原監督は「(大きな)ケガをさせるわけにはいかない。今日はベンチの指示に従ってくれ」と2回での降板を決断。続投を志願していた左腕は、さぞ無念だったのだろう。悔し涙を流したのだが、指示を伝達した宮本コーチも眼鏡を外して涙をぬぐったのだ。

 選手が試合中に涙することはあるが、コーチがベンチで泣くことはまずない。いったい、どんな思いだったのか…。試合後の宮本コーチは「C・C(メルセデス)は号泣していました。それにちょっともらい泣きしたぐらいですかね」としつつも「今年2勝4敗。『何とか勝ち星を』というところが投手陣の中で非常にあったんですね。私も感じていたので、ちょっと残念でしょうがない、仕方ないというかですね…。彼の体のことを思うと、ここで決断しなきゃいけないんだなっていう、つらい思いは私も正直ありました」と率直に吐露した。巧みな話術などを駆使しながら選手に寄り添い、最大限の能力を引き出す宮本コーチらしい〝エピソード〟と言えそうだ。

 しかし、一方でプロは厳しい勝負の世界でもある。時に首脳陣は選手に非情な決断も下さなければならない。だからこそ、百戦錬磨の原監督には「同情」といったフレーズは存在しない。以前には、昨季リーグ制覇した直後に流した自身の涙を引き合いにこう語っていた。

「勝負師はうれし涙はあっていいね。しかし、悔し涙は勝負師にはいらない。あっちゃいけない」
 さらに、コーチの試合中の振る舞いにも厳しさや毅然とした態度を求めている。

「勝負というのはやっぱり厳しいもんだ。笑っていいのは監督と選手だけよ。コーチは笑っちゃダメだ。コーチは常に眉間にシワを寄せながらね。もう心配事から、とにかく危機管理、マイナスのことを考えて『こうなったらどうしよう』って考えるのがコーチだ」

 もちろん、原監督は宮本コーチの手腕を「去年の1年で日本一上達した」と絶賛している。ただ、指揮官の辞書に「同情の涙」の文字はない。宮本流で投手陣を束ね、首位を快走できているのも事実だが、温かい人柄を物語るレアシーンは今回限りで見納めとなりそうだ。