首位・巨人が助っ人左腕の緊急降板に奮起し、8―0で虎を一蹴。チーム一丸の大勝を収めた。

 19日の阪神戦(東京ドーム)に先発したC・C・メルセデス。約1か月ぶりの3勝目をかけたマウンドに「持ち味を出してテンポよく、自分の力を100%出すことだけしか考えていない」と意気込み臨んだが、どうも様子がおかしかった。

 課題だった立ち上がり。一死後、二塁打と四球でいきなりピンチを背負うと、さっそく宮本投手チーフコーチがマウンドへ。4番・大山を二併殺打で無失点に抑え、2回もゼロとしたところで「異変」が起きた。

 ベンチで左腕に歩み寄った宮本コーチは通訳を通し、何やら諭すように対話。左ヒジをさすりながら、うなずくメルセデスの頭をなでるとハグをして離れた。よく見ると、宮本コーチのメガネは曇り、両目は赤く充血…。涙を浮かべていた。

 試合中、同コーチは球団を通じ「上半身(左ひじ)のコンディション不良のため大事を取って早めに交代させました」とコメント。ひたむきに努力を重ねてきたメルセデスの無念に寄り添ったからこその涙だったのだろう。

 ベンチで繰り広げられた〝涙の降板ドラマ〟に、ナインが奮起するのは必然だった。初回に岡本の適時打、丸の犠飛で2点を先制すると、6回一死の場面で岡本がぶちかました。相手先発・ガルシアの外角145キロのツーシームを逆らわずにパワーで逆方向に押し込むと、長い滞空時間を経て右翼スタンド前列へ吸い込まれた。「いい方向に飛んでくれました」と自画自賛の一発は2試合連続、キング独走の18号ソロ。前日、1―0で勝利した際の値千金の一発といい、打撃低調ながらも効果的な本塁打を放つ〝さすが4番〟の一撃で3点目を奪った。7回には坂本の適時二塁打、松原にもプロ初打点となるタイムリーが出て2点を追加。ついには丸にも11号3ランが飛び出し、気が付けばワンサイドゲームだった。

 守ってはメルセデスから引き継いだバトンを鉄壁のブルペン陣が守り切った。前日はエースの菅野が完封し、この日は全員でアクシデントを克服。巨人に隙が見当たらない。