「まさか…」が起きるかもしれない。巨人は18日の阪神戦(東京ドーム)を1―0で制し、連敗を2で止めた。エース菅野智之投手(30)の今季3度目の完封勝利をアシストしたのは、主砲・岡本和真内野手(24)のバットだった。本塁打キングを独走する17号ソロが値千金の決勝打。4番の風格が漂う岡本にはひそかな野望が…。実現不可能と思われてきたが、原辰徳監督(62)による〝あの〟仰天采配が転機となり、風向きが変わりつつある。

 打線は4回二死まで相手先発左腕・高橋に沈黙させられたが、岡本が左中間スタンド中段へ豪快な一発。絶好調だった時期に比べれば、打率は2割6分9厘まで下がっているが、決める時は決めるのが4番だ。

 試合後の原監督も「このところね、少々じだんだを踏みながら懸命に練習しております。グラウンドにいち早く来て打っている姿というのは、頼もしく思いますね。そのぶんいい方に出ていくと思いますし」と賛辞を贈った。

 頼れる主砲には、かなり意外な夢もある。それが、プロ入り初となる「投手・岡本」での出場だ。以前にこんな思いを吐露したことがある。

「ピッチャーで東京ドームで投げてみたい。甲子園は(高校時代に)投げたことがあるんで。(最速は)144キロっす」(岡本)

 今季は日々スタメンが変わるなか、岡本は唯一「4番・三塁」で固定起用されている。しかし、時と場合によって固定観念をもブチ壊すのが原采配の特徴の一つだ。プロ入り後の岡本は一、三塁や左翼をこなし、投手経験はもちろんない。ただ、絶対にあり得ないと思われた夢も、コロナ禍の今季だからこそ実現する可能性があるのだ。

 きっかけは、6日の阪神戦(甲子園)。11点差をつけられた終盤にリリーフ陣を温存するため、野手の増田大をマウンドに送り込んだ一件だ。この原監督の起用法を巡っては球界内に賛否を呼んだ一方で、野球ファンから「楽しめた」「ワクワクした」などの声も相次いだのも事実だった。そして、何よりも総指揮官の原監督自身が伝統球団に新たな風穴をあけたことが大きい。

 また、6日に登板したのは結果的に増田大となったが、直前まで一緒にキャッチボールをして肩をつくっていた捕手の岸田も候補の一人だった。さらに、その後日には指揮官から「本当は(坂本)勇人も投げたかったらしいんだよ。勇人はもうやめとけ(笑い)」という真偽不明の情報も…。つまり〝野手兼任投手〟の予備軍は増田大だけではないのだ。

 首脳陣の一人も野手が登板する可能性を「もちろんある。これから連戦がずっと続いてくるから」と否定しなかった。となれば、岡本も…というわけだ。

 もちろん、岡本が〝夢のマウンド〟に立てるとすれば、前回同様に大量ビハインドの展開だろう。チームにとってはありがたくないが、ファンの心は大いにくすぐられそうだ。

 8度目の勝利打点を挙げた当の岡本は「そうですね。まあ、しっかり頑張りたいなと思います」といつも通りひょうひょうとしていたが…。そのうち「ピッチャー・岡本」がアナウンスされる日が訪れるかもしれない。