チーム野手最年長が明かしていた「覚悟」とは――。巨人が代打・亀井善行外野手(38)の一打で13日のヤクルト戦(東京ドーム)を4―3で制し、今季初のサヨナラ勝ち。初球を仕留めたことに「試合時間3秒だったんですけど」と笑いを誘ったが、迷いのないひと振りを生み出した背景には、巨人一筋16年の男ならではの思いがあった。

 仕事人を思わせる一打だった。3―3の9回二死一、三塁。代打で登場した亀井はマクガフの初球、内角高めの150㌔直球を中前に弾き返し、熱戦に終止符を打った。

 足のコンディション不良から「今のところ守備に就けない。バッティングしかできない状況」。それでも原監督の信頼は厚く、昨季の阿部(現二軍監督)のような「とっておきの切り札」として不可欠な存在に位置付けている。

 しかし、亀井に気負うところはない。むしろ吹っ切れているようで、試合後には「本当に一振りで。1球ファウルを打ったら負けだと思うので」と言った。その境地には理由があり、亀井によると2、3年ほど前から持ち始めた「戦線離脱したらクビ」との覚悟にあるという。

「後悔しないために覚悟を持ってやっていくっていうスタイルがここ2、3年ですね。覚悟をもって野球をやったら、楽しいんですよ。怖いものないんで。要は『今年で終わるかもしれない』ってことを思っておけば、後悔しないようにするじゃないですか。いつ終えてもいいように…そういう気持ちは常に持つようにはしました。その中で野球をやってたら、後悔したくないから楽しもうと思うし『遊び心』も出てくる」

 昨季72試合で起用された1番でも、そのスタンスを発揮した。次打者につなげるため、先発投手の全球種を引き出すべくファウルで粘りまくるスタイルも、そんな覚悟からくる「遊び心」が生んだものだった。

 現役生活は終盤に差し掛かっているが、そこに悲壮感はない。亀井は数字に残らない献身的な仕事を「当たり前のこと」と言い、こう続ける。

「期待されている若手もいっぱいいるし、ダメだったらポイされるっていうのは分かっている。今まで辞めていった人のこと見ていたら分かる。その危機感は絶対に持っておかないといけない」

 求められる役割が何であれ、いかにチームの勝利に貢献するかだけを考える。「チームのどこかのピースにハマれたらいいなって思います。去年、1番がハマりましたけど、今年はどこになるか分からない。代打になるかもしれないし、もしかしたら7番とか、1番かもしれない。そこにしっかりハマれる活躍ができたらいいなとは思ってますけど、それがダメだったら…とも思いますよ」

 厳しい世界を生き抜いてきた経験は、厳しい局面でこそ発揮される。いくら若い力が台頭してきても、まだまだ背番号9の力が巨人には必要だ。