頑張り続けられるのには理由がある。楽天・涌井秀章投手(34)が12日の西武戦(メットライフドーム)で7回途中2失点と力投し、初の開幕7連勝を飾った。同日には6、7月の月間MVPも受賞。パ・リーグ3球団(西武、ロッテ、楽天)での受賞は史上初の快挙だ。昨年3勝のベテラン右腕の巻き返しには、現在も師と仰ぐ高校の先輩の存在もあった。

 猛暑の中でも勢いは衰え知らずだ。この日は7回途中に右脚がつりそうになって緊急降板したが「ひとまず勝てて良かったです。(右脚は)つる前に代えてもらったので(今後も)大丈夫です」。前回5日のソフトバンク戦では9回一死まで無安打無得点の1安打完封劇を披露するなど、いまや「無双」の雰囲気すら漂う。

 新天地での好調ぶりには根拠がある。「(新型コロナ禍の)自粛中から続けていた」という走り込みの重要性や、今季から持ち球の一つとして習得したシンカーによる投球幅の拡大。さらに「すごく必要とされている感じがする」という楽天での「やりがい」を本人は強調する。

 確かに昨季まで6シーズン在籍したロッテでは伊東勤前監督時代こそ活躍したが、井口監督が就任した2018年以降は低迷。特に井口政権下では起用法などを巡り一部首脳陣と折り合いが合わず不遇を味わった。そこで昨オフにトレードを志願。退路を断って新天地での再起に懸けた。この活躍は当然といえば当然だろう。

 もっとも本人はあまり口にしないが、今季の奮闘ぶりを後押しする要因は他にもある。横浜高の先輩でプロ入り後も師と仰ぐ西武・松坂大輔投手(39)の存在だ。

 涌井は今春キャンプ中から3年ぶりに同一リーグでプレーすることになった松坂との投げ合いを熱望。「今まで何度かチャンスはあったんですが、結局(実現)できなかったですからね。やはり同じ試合で投げてみたい。そのためには僕もシーズンを通して先発ローテーションの一人として投げ続けないといけない」と力説していた。

 憧れの先輩右腕は現在7月に受けた頸椎手術の影響でリハビリ中だが、今季中の復帰を目指している。涌井も直接対決までは是が非でも好投を続ける必要があるというわけ。〝目標〟はまだ先だけに34歳右腕の躍進は当分止まりそうにない。