広島・長野久義外野手が元気いっぱいだ。移籍2年目の今季は序盤こそ代打起用がメインだったが、スタメンに定着した今月は36打数14安打の打率3割8分9厘、3本塁打、10打点の大暴れ(8月10日時点)。〝夏男〟ぶりをいかんなく発揮している。

 ただ、昨年の夏は屈辱にまみれた。7月初旬に二軍へ降格すると、2か月近くファーム生活を送った。8月末に再昇格して9月は中軸を任されたが、プロ10年目で最少の72試合出場にとどまり、打撃成績も全てワースト。本人は相当悔しい思いをしたのだろう。

 昨年のちょうどこの時期だ。8月12日からマツダスタジアム最後の巨人3連戦。広島は1勝2敗で負け越し、4連覇は事実上消えた。長野は古巣との決戦に照準を合わせ、打撃状態を上げていた。「(菅野)智之はきますかね?」と古巣のエースとの対戦も楽しみにしていたが、一軍から声はかからなかった。

 巨人では原監督も由伸前監督も、なんだかんだ実績を信頼して使い続けてくれた。そこに長野の甘えがあったかもしれない。広島の空気に驚き、戸惑っているうちにシーズンが終わってしまったように見えた。

 記者はプロ入りから追い続けてきたが、こんなに本気のオフを過ごした長野を見たことはない。年末は海外でみっちり下半身を鍛え、年明けは西武・内海の鹿児島・奄美自主トレに合流。キャンプは首脳陣の「暖かいところで」との配慮で沖縄の二軍キャンプでスタートしたが、2月1日の動きを見て目を疑った。古傷のヒザ、ヒジを気にする素振りもなく、全開で走る、投げる。「どうです? まだまだ動けるでしょう。だめですよ、ベテランって書いたら」。体は例年より明らかに絞れていた。

「チョーさんの性格からして、きっと自分に怒っているんだろう。汗かいている姿なんか他人に絶対見せたがらなかったヤツが、あんなに走っている。余程、プライドが傷ついたんだろうな」。巨人時代から長野を見てきたベテランスコアラーの言葉が耳に残る。

「今年の長野はやりますよ」。沖縄キャンプ帰りでそう宣言すると某先輩記者からは「本当かぁ?」と鼻で笑われもしたが…。今年から記者は東京の編集局に幽閉の身。番記者として一挙手一投足を追えていないのは残念だが、確信は深まるばかりだ。(堀江祥天)