プロ野球は、このまま継続できるのか。公式戦開幕後、初めて選手に新型コロナウイルス感染者が出てしまったことで、球界内では悲観的な声が噴出している。ソフトバンクは1日に長谷川勇也外野手(35)がPCR検査で陽性判定を受けたことで、2日の西武戦を中止に。この決断により、今後も試合中止が相次ぎ、ペナントレースどころではなくなってしまう事態が懸念されている――。

 ソフトバンクは2日に監督・コーチ、選手、スタッフ約200人のPCR検査とペイペイドームとタマスタ筑後の消毒作業を行った。ただしファーム施設を利用している一軍の選手、スタッフ7人は先にPCR検査を受けて陰性だったため、一軍は影響を受けないと判断。三笠杉彦ゼネラルマネジャーは同日、オンラインで記者会見を行い「一軍の活動には問題ない」と、4日からの楽天との6連戦に向け、3日に遠征先の仙台へ移動する予定を明かした。

 またファームの選手では新たに1人が発熱の症状を訴えているという。検査結果や保健所による濃厚接触者の特定を待つ必要があり、4日に予定されている二軍戦の実施は難しい見通しとなっている。

 工藤監督は「ウイルスの怖さを改めて感じる。これまで以上に感染防止に努めて、最善の準備をして試合に臨むという姿勢は変わらない」とコメント。選手会長の中村晃は「身近なチームメートから感染者が出てしまうことになり、驚くと同時に、よりしっかりと感染防止の意識を持って過ごさないといけない」と警戒感を強めた。

 市中感染も広がり、急拡大する新型コロナの脅威。シーズンの約3分の1を消化したプロ野球だが、開幕後初めて選手に感染者が出たことで、ソフトバンクは専門家の見解に基づき、2日の西武戦(ペイペイ)を急きょ中止にした。

 球団が長谷川の行動履歴およびチームスタッフとの接触状況を調査した結果、一軍監督・コーチ・選手、スタッフとの直接の接触はなかった。だが、専門家から「ファーム施設を利用しており、同施設を利用している一軍選手・スタッフを経由しての新型コロナウイルス感染の可能性を否定できない」との見解を得たため、一軍公式戦中止という重たい決断に至った。

 やむを得ない措置だったが、球界内では初動となったソフトバンクの判断を踏襲することで生まれるジレンマについて、悩ましい声が出ている。「一軍に濃厚接触者がいなくても、一度試合をやめて全員PCR検査を受けるというのは〝一発目〟としてはいいが、これが〝規定ルール〟みたいになると、ファームで発熱した人が出るたびに、どの球団も試合をやめなくてはならない。今後このスタイルでやっていくかについては、もう一度、専門家やアドバイザー、NPBの中で議論が必要だと思う」(球界関係者)

 今回のソフトバンクのように、可能な限り安心を担保することは大事だ。一方で、プロ野球開催の持続可能性という点では不安が入り混じる。興行でもあり、ファンは突然中止を通告される。今後の感染状況に明るい見通しがあるわけではなく、こうしたストップが多発すれば、シーズン消化も難しくなる。ペナントレースどころではない。

 今後プロ野球はどうなるのか。開幕して1か月半、安定開催が危ぶまれるコロナの猛威に、球界は再び戦々恐々としている。