長いトンネルから竜のエース左腕がついに抜け出した。中日・大野雄大投手(31)が31日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で9回を5安打3失点の力投を見せて今季初勝利をマーク。疲労蓄積の中継ぎ陣に休養を与えるチーム初の完投勝利を決めた。

 そんな大野雄が奮い立った要因は、チームメートの先輩と後輩のおかげだった。この日、128球の熱投を披露したが、最後までマウンドを譲るつもりは一切なかった。

 一軍本隊に帯同せず、ナゴヤ球場で居残り調整中のときだ。ベテランの山井や藤井らから「みんなに『なに、(早い回で)降りとるねん! お前は何球投げようが、最後まで行かないかんとちゃうの!』と先輩方に言ってもらえた。僕も10年目で中堅になってきて、なかなかそんなことを言ってくれる人が少なくなってきた中で、すごく僕の中で火がついた。今日は何球投げても最後までと思って投げた」と首脳陣に続投を志願してまで気合で投げ続けた。

 さらに参考にしたのはここまで今季2勝を挙げている同じ左腕の松葉の投球だ。「松葉がいい投球が続いているのはどんどんストライク先行で攻めていくという姿だったのでそういうところを参考にした」と打ち明ける。先輩の9回まで投げ切れ指令と、後輩の攻めていく姿勢を手本にしていたわけだ。与田監督も「最後まで一人でよく投げ切ってくれた。イニングごとに確認したら大野は『まだ行けます』と心強い言葉だったので。エースとして最後まで投げるんだという気持ちがすごく伝わってきた」と最敬礼だ。

 しかし、大野雄は手放しでは喜べない。今季は自身3度目の開幕投手を務めながら今季7戦目まで1か月以上も勝ち星から遠ざかり「もちろん、うれしいけど、遅すぎますよね。期待されているところは貯金をつくることなのに7戦で1勝3敗。まだ借金が2つもある。うれしいけど、そんなに喜べない状況ですね」と気を引き締める。竜のエース左腕はここから貯金をどれだけ量産していくのか楽しみだ。