負けない男に黒星をつけたのは、鷹が誇るスーパーサブだった。ソフトバンクの明石健志内野手(34)が、31日の西武戦(ペイペイドーム)で殊勲の決勝弾を放った。

 4―4で迎えた6回二死、昨季から13連勝中で21試合負けなしのニールを打ち砕いた。「高めのツーシームを狙っていた」。捉えた打球は右翼席で弾んだ。価値ある一発は、西武バッテリーの反応を見れば一目瞭然だった。ニールは着弾点を見届けると額に右手を当て天を仰いだ。さらに捕手の森は、座したまま後ろに倒れかかるように手をつき悔しがった。

 今季15試合目のスタメンだった。有事に備える時もあれば、与えられた出番ではキラリと光る存在感を放ち続けてきた。相手との相性や状態を見極めて起用するベンチの采配も光るが、どんな局面でも声がかかった時にフルスロットルで戦場に立つ準備を四六時中ずっと欠かさないプロ意識の高さが光る。

 とりわけ肉体の変化に敏感だ。グラム単位で体重の増減を感知し、調子の狂いを察知する。「人生で一番太っていたのは(ドラフトで)指名されて新人合同自主トレまでの間。18歳の時、73キロですね。だから、僕の体重のピークはダイエー時代ってことになります」。2005年からソフトバンクとなったチームに、現役野手で唯一残る〝ダイエー戦士〟だ。

「最後に白米をおかわりしたのがいつか、記憶にありません」。節制の賜物で体重は常に68キロをキープ。体脂肪率は6%。「一番いいパフォーマンスを出せる状態を作っておくのは最低限。あれ食べたい、これ食べたい、ありますよ。でも、ここで生きていくためには言ってられない。オフも関係ない。そこで緩むと後が大変ですから」。

 とにかく自分に厳しい34歳。限られた出番で結果を残すため、日頃から精神が研ぎ澄まされている。肝が据わり、勝負根性が光るプロ17年目が、常勝軍団に欠かせないピースとして脇を固める。お立ち台で「チームにとっても大きな勝利になったと思います」と控えめに笑った明石。主演を張った男に、この日一番の拍手が送られた。