ソフトバンク松田宣を苦しめる〝残像〟…ささやかれた真の不振理由

2020年07月23日 11時00分

松田宣は〝試練〟を乗り越えられるか

 開幕から不振を極めたソフトバンクの松田宣浩内野手(37)が、今季初のお立ち台に上がった。22日の日本ハム戦(ペイペイドーム)で、チームを首位タイに押し上げる逆転の決勝打。「開幕から全く貢献できていなかった。初めて貢献できました…」殊勲打にも少し遠慮ぎみに笑った。7月前半まで打率は1割台。ようやく2割台に乗せたが、まだまだ本調子ではない。

 不振原因を追究し続けた。疑心暗鬼になり、チーム関係者に「目の衰えではないか」とたずねたこともあった。打撃フォームも徹底的に分析した。「打撃はパズルですから。目付けのところだったり、バットの構えだったり、スタンスをオープンにするか、スクエアにするかとか、狭めるとか広めるとか、ゴロを打ちにいくとか、フライを打ちにいくかって。何百通りもあるんですけど…」。今も模索が続いている。

 本人のアプローチが物語るように「原因はすべて自分自身にある」というのが熱男の考え。結果が出ないのは技量不足と己の退化、それ以外はない――。言い訳は決してしないのが流儀だ。

 だが、プロ15年目、通算1661安打を放ってきたベテランの大不振を、球界OBや評論家、チームはこう見ていた。「開幕前の頭部死球の影響があるのではないか」。松田宣は6月2日の練習試合・オリックス戦で左側頭部付近に死球を受けていた。

「頭部死球の影響で条件反射的に踏み込みが浅くなっている。それが前でさばく松田本来の打撃のメカニズムに狂いを生じさせている」(球界OB)。「かつて頭部付近への厳しい攻めや死球が多かった落合博満さんや山本浩二さんといった大打者たちでさえも一時的に悩まされた事象。開きが早くなったり、条件反射的に何度も狂わされていた」(評論家)。無意識に起こる体の反応が、繊細な打撃のメカニズムを狂わせているのではないか、という指摘だった。

「本人はそれらしいことを口にしたり、悩んでいる様子を見せることは一切ない。だから、周りが言うこともない。だけど、実際はチーム内にもそういう可能性を指摘する声はある」(チームスタッフ)。今月初めの楽天戦の試合前、松田宣が打撃練習を行うケージ裏で複数の首脳陣が頭部死球のジェスチャーを交えながら意見を交わすシーンもあった。

 ただ、頭部死球を受けた直後の6月6日、本人はこう語っていた。「恐怖心でバットが振れなくなるということも聞く。でも、それだったら野手としては全然ダメ。生きている以上は、よけずにいく」不振原因を指摘した球界関係者たちも「大打者や力のある選手にとっては一時的なもの。(原因が見立て通りなら)松田も今だけだろう」と口を揃える。

 試合後の松田宣は「もうひとつ、レベルを上げるための〝試練〟かなと思っています。ここを乗り越えていきたい」と話した。2年連続で30本塁打をマークして日本代表に返り咲いた昨季は「今が全盛期」と語った37歳。たとえ頭部死球が尾を引いていたとしても、その残像に屈するような熱男ではないはず。この日の劇打をきっかけに、吹っ切れた大暴れに期待したい。