巨人のドラフト戦略に力強い〝助っ人〟の登場だ。今なお続くコロナ禍の影響により、アマチュアの大会が次々と中止や延期に追い込まれ、金の卵たちにとってはアピールの場が限定される事態となっている。新たな才能を発掘するプロのスカウトたちにとっては情報減も死活問題となっている中、実は阿部慎之助二軍監督(41)が「兼任スカウト」に立候補していた。 

 新型コロナの蔓延はアマチュア球界にも大打撃を与えた。全国的な活動自粛により、高校では春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止となり、大学も六大学や東都をはじめとする全国の春季リーグが延期や中止に。社会人も例年7月に行われていた都市対抗が11月に延期となった。

 8月10日からセンバツの代替大会「甲子園高校野球交流試合」が行われるものの、本来ならば予選大会などスカウトの目に留まる多くの機会が奪われてしまったのは事実だろう。

 一方、逸材を発掘したいプロ球団側も頭の痛いところ。一時はアマチュア界の活動が停止したことで、スカウト陣も完全に機能不全に陥った。巨人では活動再開後の6月中旬に最速151キロ右腕・中森俊介投手と、高校通算32本塁打の来田涼斗外野手(ともに3年)を擁する明石商に3人のスカウトを派遣するなど精力的な動きを見せている。ただ、例年に比べると全体的な情報量が減少することは否めず、ドラフト本番まで難しい判断を迫られそうだ。

 こうした苦境に頼もしい援軍となりそうなのが阿部二軍監督だ。キッカケは春季キャンプ中に行われた練習試合だった。
「JR西日本と三軍との試合(2月21日)を見ていたら、下手投げの投手(前元良太)に6回1点に抑えられた。その日だけが良かったのか、本当にいい投手なのかはスカウトにマークしてもらえば分かる。いい選手がいたら、スカウトにどんどん言った方がチームのためになる」(阿部二軍監督)

 現役時代は最強捕手として数多くの選手と接し、引退後の昨オフにはドミニカ共和国で〝海外スカウト修行〟もこなした。その眼力は確かだろう。最大の使命は戦力の底上げにあるが、自らのアンテナに引っかかった選手を積極的に推薦していくつもりなのだ。阿部二軍監督のアイデアに球団側も「練習日に社会人と試合をしたいと。自身のコネクションも使って試合を組んで、対戦相手の有望選手の情報をスカウトに上げてくれている。ありがたいし助かります」と最敬礼だった。

 すでに巨人二軍と社会人の交流戦は4試合が行われた。対戦相手の中には、プロ注目の150キロ右腕・小野大夏投手(20=Honda)らの姿もあった。青年監督の意向を受け、球団も大学や社会人チームとの試合を組む可能性を模索していくという。

 運命のドラフト会議は10月26日。その席上で阿部二軍監督による推薦選手の名前が挙がるかもしれない。