これぞ4番の仕事だ。巨人・岡本和真内野手(24)が、19日のDeNA戦(横浜)で、9回にチームを6連勝に導く9号決勝2ランをぶっ放した。ただ、この一発が飛び出すまで12打席無安打で8三振の空回り。それでも、ここぞの場面で勝負を決められる切り替え術には〝元木メンタルクリニック〟の存在もあった。

 決める時は決める。9回に代走・増田大の好走塁で3―3の同点に追いついた直後だ。岡本は代わったばかりの相手5番手・国吉の151キロ直球を叩いて右中間スタンドへ。主砲の一発にベンチはお祭り騒ぎとなり、岡本も「よっしゃ~!!」と雄たけびだ。

 5―3の逆転勝利に原監督も「(岡本は)ずっとためてたのかな? 横浜であんまり良くなかったよね。大事なところで一本出たというのは大きいですね」と絶賛した。

 ただ、指揮官が指摘したように今カードの岡本のバットはとことん湿っていた。この日の2三振を含めて3連戦で計8三振。岡本も「むちゃくちゃ悪いという感じではなかったですけど、ちょっと打ち急いでいた部分はあった」という。チャンスでも凡退を繰り返した悔しさを爆発させる結果となったが、不調に陥った時こそ、いかに切り替えられるかが重要になってくる。それが、毎試合出場し続ける主力選手であればなおさらだ。

 そんな切り替える〝すべ〟を若き主砲に植え付けたのが、元木大介ヘッドコーチ(48)だった。昨季は内野守備兼打撃コーチとして、岡本に1年間寄り添った元木ヘッドはこう評していた。

「和真もまだまだ。技術面はすごいかもしれない。俺よりも全然すごい数字も残しているし、立派な選手だと思うけど、内面がまだ子供なんだよ」

 ひょうひょうとしているようで、やはり巨人の4番を張る重圧はすさまじかったようだ。自身が打てずにチームが敗れれば、その責任は4番に跳ね返ってくる。岡本はポーカーフェースを決め込んでいたが、内心は穏やかではなかった。元木ヘッドが明かしたところでは「(打てないと)頭がいっぱいになってイライラして、ストレスをためていた。そういう時は話を聞いてあげていた」という。

 そして、がんじがらめになった岡本の頭を〝魔法〟のような言葉で解きほぐした。

「(メディアの前で)『知るか!』って言ってやれよ。お前も『明日、3本打ちゃいいんでしょ?』って思えよ。3本打っても負ける時はある。今日は今日。明日は明日。関係ねえから、好きにやれよ!」

 メンタルが腐りかけた時こそ、元木ヘッドの言葉が岡本の心を打ったのだろう。他球団のマークが厳しさを増す中で、昨季は2年連続で30発超えをマーク。そうした経験が肥やしとなり、今回のように空回りしたバットからも快音を響かせた。

 当の本人は「ヒーローは僕じゃなくて増田(大)さん。僕はどさくさに紛れて…」と、いつもの調子ですっとぼけたが、間違いなく岡本もヒーローだった。この勢いでアーチを量産し、独走態勢を築けるか。