【現場ノート取材のウラ側】11日のDeNA戦(甲子園)で1点リードの9回に登板し、3点を失って今季2度目のセーブ失敗に終わった阪神・藤川球児投手(39)が一夜明けて出場選手登録を抹消された。当面は二軍で再調整に臨む。

 前夜、ソトに勝ち越し2ランを浴びた藤川は途中交代を告げられると憔悴した表情でベンチに戻った。「西(勇)や、みんなが頑張ってゲームを作ってくれていたのに、こういう形になり本当に申し訳ないです」。試合後、球団広報から配信された藤川のコメントを見て違和感を覚えた。“謝らない美学”の持ち主だったからだ。

 抑えて当然、打たれればボロクソに叩かれる。セットアッパーとして、守護神として人気球団のブルペンを10年以上支えてきたからこそ「チームを背負う」ことへの自負は人一倍強い。昨年はこんな話もしてくれた。

「例えばこれまで長年エースとしてチームを支えてきたメッセンジャーは打たれても絶対に『ごめんなさい』とは言わなかった。僕もそう。打たれて謝って『いいよ、いいよ』と言われているうちは一流じゃない。僕は数字と戦ってきた人間。叩かれて、それに耐えて、数字を残し続けてこそ一流。そういう選手こそがチームを背負える存在になり得る。そういうエキスをチームに残したい」

 そんな強気の男が「申し訳ない」という言葉を口にした“真意”はどこにあったのか? 新型コロナウイルスの影響で選手への直接取材が制限されている今は知るべくもない。ただ、藤川は自他ともに認める「筋金入りのスロースターター」。事実、昨季も春先は不調に苦しみ、二軍調整を経て状態を徐々に上げていった。最終的に56試合に登板し、防御率1・77と圧倒的な数字を残した。

 12日のDeNA戦ではスアレスが代役として9回のマウンドに上がって今季初セーブをマークしたが、藤川のいない甲子園の9回はどこか味気ない。今年も火の玉守護神は万全の状態で帰ってきてくれると信じている。(雨宮弘昌)