期待の大砲がいよいよ乗ってきた。9日の巨人戦(甲子園)を2―1で快勝した阪神の立役者となったのが新助っ人ジャスティン・ボーア内野手(32)だ。

 両軍無得点の7回無死一塁。巨人・メルセデスの甘く入った127キロのスライダーを捉えた手応え十分の一撃は右中間席最深部中段へ。対巨人戦通算15打席目で飛び出した初安打は、値千金の決勝3号2ランだ。

「コンパクトにスイングした結果、ホームランになってくれてすごく興奮した!」。お祭り騒ぎの一塁ベンチへ雄たけびを上げながら〝ファイアーボール〟の決めポーズを繰り出した。今季初のG倒を決めた矢野燿大監督(51)も「完璧! ボーアにはそういうのを期待しているわけやし」と新大砲の渾身の一撃を満足げに振り返った。

 この日は本拠地開幕戦。しかも相手は開幕戦で悪夢の3連敗を喫した巨人で、前回12打数無安打と大ブレーキだったボーアはそんな負の記憶を自分なりの方法でインプットし、闘志をかきたてていた。

 伝説の助っ人「バースの再来」という高い期待を受け、連日のメディア対応にも冗談を飛ばしたりと基本、注目されること自体は好きなタイプ。異国の地でも「自分がどう報道されているか」も逐一チェックし、本塁打を打ったシーンを扱った関西スポーツ紙の1面を自らのインスタグラムにアップしている。

 だが、そんなボーアが唯一「抑え込まれた」と報道をタグ付けして保存したのが、東京ドームでの6月20日の開幕第2戦。4番で出場し、3度の好機をことごとく潰した試合の写真。巨人・高木の外角真っすぐに全く反応できず「見逃し三振」を球審からコールされ、ぼうぜんと打席に立ち尽くしたいわば〝屈辱〟のシーンだ。あえてその写真を取り込んだのは、リベンジに燃えたからに他ならない。

 試合後「巨人に、ということより『負ける』こと自体が嫌い。どのチームにも勝ちたいと思っている」と冷静に振り返ったボーア。虎の今季本拠地初勝利はメジャー通算92発男が〝意地の一発〟で引き寄せたとも言えそうだ。