プロ初先発マスクのソフト九鬼 プロ初安打が初アーチも「満足するところは一つもない」

2020年07月05日 19時38分

プロ初安打が初本塁打となったソフトバンク・九鬼

 ソフトバンクの高卒4年目・九鬼隆平捕手(21)が5日の日本ハム戦(札幌ドーム)で初のスタメンマスクをかぶり、プロ初安打となるソロ本塁打を左翼席中段へ豪快に放った。

「出る気満々で札幌に来た」。もともと、勝ち気な性格が売りだが、理由はそれだけではなかった。一軍合流した4日、目を疑う光景に心を痛めた。高校時代の3年間を過ごした熊本・八代市の惨状。大雨で球磨川が氾濫する豪雨被害に地元民の苦悩を察して言葉を失った。球磨川は移動や通学で川沿いをよく通った。「あそこまでになったのはびっくり…」。自然の脅威を思い知らされた。

「このタイミングで(一軍に)上がったのは(世話になった八代を勇気づける)チャンスなのかなと思っている。今日活躍して恩返ししたい」
 単なる個人的なアピールだけではなく、プロへの礎を築いてくれた特別な地を励ます思いが満ちあふれていた。

 まさにそんな思いを乗せた大飛球だった。先頭で打席に入った3回。142キロの内角真っすぐをうまく捉えると、高々と舞い上がった打球は左翼席中段付近に着弾した。「食らいついていこうと思った」。プロ通算4打席目、スター性を感じさせる「初安打がプロ1号」となった。

 春季キャンプでは積極的に、鷹のレジェンド・城島球団会長付特別アドバイザーに質問。打撃面では力の伝え方などを教わった。課題と向き合い、甲斐に挑戦状を叩きつける意気込みで、4年目のシーズンを戦っている。

 21歳ながらリード面を買われている期待の捕手。工藤監督もそこを認めた上で「あとは打撃の部分」と、ホークスの捕手の宿命でもある打撃の成長を促してきた。それだけに価値ある一発。それでも九鬼に浮かれた様子はない。「今日の結果で満足するところは一つもない。これからも結果を残し続けて、いつでも任される準備をしたい」

 二軍にいる時から一軍の試合をチェック。「プロは一軍で貢献してこそ」と相手の研究に没頭してきた。それだからこそ試合後、最も力がこもった言葉は「捕手はチームの勝利が一番。悔しい。しっかりと反省して次に生かしたい」。

 初安打がプロ1号はすでに過去のもの。敗戦を悔いる表情が物語っていた。工藤監督は「リード面は(担当コーチから)ちゃんと落ち着いてやっているという話だった。打者の研究をちゃんとしていたんだと思う」と評価。その上で「スローイングが乱れるところがある。相手も悪いとなると仕掛けてくる。そこを磨いてほしい」とあえて明確な課題を示し、努力家の背中を押した。

 3試合連続で正妻・甲斐が先発から外れるなどチーム内の競争は風雲急を告げている。気質や姿勢から「正統派」を感じさせる21歳。「希望の光」となる戦力が確かな一歩を踏んだ。