04年3月4日「長嶋氏脳梗塞で倒れる」列島に衝撃 ミスター回復へ!! 3大宗教緊急合体

2020年07月04日 11時00分

気丈に会見に臨んだ一茂氏。右は主治医の内山真一郎氏

【球界平成裏面史(66)】「ミスター倒れる」――。平成16年(2004年)3月4日、日本中に衝撃が走った。巨人・長嶋茂雄終身名誉監督が脳梗塞で倒れ、東京都内の病院に緊急入院。病院側の話では「本人には意識があり、家族の問いかけには応じている」というものの、日本球界の象徴であり、当時はアテネ五輪野球日本代表の監督を務めていたミスターの「まさか」とあって、病院前には多くの報道陣が詰めかけ、騒然とした雰囲気に包まれた。

 長嶋氏には長男の一茂氏や次女の三奈さんら家族が付き添い、その病状を日本中の誰もが心配した。また、記者会見での毅然とした態度などで、評判を上げたのが一茂氏。そして一躍、有名になったのが巨人の原沢敦広報部長だった。原沢部長発の「長嶋さんが笑顔を見せました」「長嶋さんが今朝、ヨーグルトを食べました」などの現状報告が「長嶋笑った」「長嶋ヨーグルト」などスポーツ紙の1面記事を飾るほどだった。

 気になる長嶋氏の病状は日を追うごとに回復の兆しを見せていったが、当時の巨人担当記者たち、とくに長嶋監督時代にお世話になった記者たちは、祈るような気持ちで日々の取材を繰り返していた。そんななか、記者が3月10日付本紙1面で書いたのが「長嶋さん 釈迦が動いた」「世界3大宗教が緊急合体」という記事だった。

 取材のきっかけは、長嶋氏が監督時代に神社仏閣へのお参りに熱心で、とりわけ「科学で解明できない不思議な力」に強い関心を持っていたこと。長嶋氏と親交の深かったお寺の住職に取材をしてみると…。

「世の中にはいろいろな宗教がありますが、今は宗教の違いや宗派の違いなどをどうこう言っている場合ではない。とにかく長嶋さんのために、一生懸命お祈りすることです」。本当にその通りだと心の底から思った。そこで、キリスト教の教会とイスラム教の関連施設に片っ端から取材をかけた。

 長嶋氏の自宅近くの教会は「ご病気がよくなってほしいというのに宗教は関係ありません。一日も早い回復を祈っています。長嶋さんのために祈りをささげている方もいらっしゃるようです」。イスラム教のモスクでは「ナガシマさんというのは皆さんの尊敬されている方なのでしょう? それならば私たちもその方のお大事を、唯一の神様にお願いしましょう」と、長嶋氏のためにアラーの神様に祈りをささげてくれることを約束してくれた。

 かくして仏教、キリスト教、イスラム教の「世界3大宗教が緊急合体」――。一人の人物の病気平癒のために3大宗教が合体することなど、おそらく世界初の事態だろうが、おふざけでも何でもない。当時も思ったことだが、これは取材というよりも「長嶋さんのために祈ってください」という「お願い」だった。

 記事の最後では「医者の場合はどんな名医がチームを組んでもその数には限りがある。だが『祈り』なら話は別。世界3大宗教が合体すれば、とんでもない数の人たちのパワーが長嶋氏に注がれることになる」と結んだ。いつも真面目に記事を書いてはいるものの、この記事だけは大真面目に書いた記憶が今も残っている。(続く)

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