矢野阪神よ、虎が猫になってどうする! 本紙評論家・伊勢孝夫氏が低迷原因を指摘

2020年07月02日 11時15分

元気のない阪神・矢野監督(中)

【新IDアナライザー伊勢孝夫】

 低迷の原因はベンチにあり――。阪神は1日の中日戦(ナゴヤドーム)に3―6で逆転負けし、開幕から4カード連続の負け越しが決まった。目指すは2005年以来のリーグVだが、首位巨人とは5・5ゲーム差の最下位。いったい、どうしてこんなことになってしまったのか。恒例の順位予想で阪神を優勝候補に挙げた本紙評論家の伊勢孝夫氏は「結果に一喜一憂しすぎ」と指摘。巻き返しに必要なのは矢野燿大監督(51)をはじめとした首脳陣の忍耐と努力だと強調した。

 阪神は決して弱いチームではない。十分に優勝を狙える戦力が整っていると踏んだからこそ、順位予想ではセ・リーグの一番上にした。しかし、ふたを開けてみれば巨人との開幕カード3連敗に始まり、1日の中日戦を終えて4カード連続負け越し。わずか11試合で首位巨人には5・5ゲーム差と水をあけられた。

 原因はハッキリしている。一つはメディアでもしきりにクローズアップされている新外国人選手のボーアだ。メジャー通算92本塁打の実績を誇る大砲は4番で日本デビューを果たしたものの、8打席連続無安打と凡打を繰り返して巨人との開幕3戦目には6番降格。来日初安打が飛び出すまでに5試合、19打席を要した。左投手を苦手としており、球界を代表する左腕である今永が先発した26日のDeNA戦ではスタメンから外された。

 しかし、私に言わせればこうした付け焼き刃の対応は「何を今さら」だ。ボーアが左投手を苦手としているのはメジャー在籍時の成績を見れば明らか。この欠点を矯正、修正すべきは打撃コーチをはじめとした首脳陣の仕事で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が大幅に遅れたことを考えれば、キャンプインから4か月以上も猶予はあった。それを怠ったのは怠慢でしかない。

 開幕直前の広島との練習試合3連戦(6月2~4日)で、ボーアは3戦連続本塁打を放ったが、あれは広島に「打たせてもらった」ようなもの。結局、得意コースと苦手コースをライバル球団のスコアラーに丸裸にされただけだった。本質を見ようとせず、スポーツ紙やインターネットでも確認できる結果の良しあしで4番に据えたり、外したりでは選手と首脳陣の間に良好な信頼関係やコミュニケーションは築けない。矢野監督は最低でも他球団との対戦がひと回りする今週末までは我慢して、ボーアを4番のままにすべきだった。

 そのボーアは1日の中日戦の9回に、苦手としてきた左投手の岡田から待望の来日1号を右翼席に放り込んだ。打ったのは甘いコースに入ってきた変化球で打ち方も本来のものではなく、言うなればラッキーパンチ。それでも本人は、精神的にだいぶ楽になったのではないだろうか。

 そんな今こそチャンスだ。首脳陣はいま一度、重圧から解放されたボーアとヒザをつき合わせて徹底的に話し合うべきだろう。今週いっぱいで開幕から続いた5カード連続の遠征は終わる。本拠地甲子園球場に戻れば十分に練習を見る時間も確保できるし、早出特打でもさせて、室内練習場などで徹底的に付き合ってやるべきだ。

 日本の野球は緻密で甘くない。私がこれまでコーチとして指導してきたバレンティン(現ソフトバンク)やローズ(元近鉄)もそうだが、日本球界で成功を収めた外国人野手たちは、みな例外なく謙虚に日本の野球を学び、日本人選手よりも練習してきた。シーズンは始まったばかり。まだまだ間に合う。

 もう一つ気になるのは捕手の起用だ。それこそ巨人との開幕3連戦では3戦とも先発マスクを代えていたが、扇の要はやはり梅野で固定すべきだろう。盗塁阻止率も含めたインサイドワークに加え、彼の打撃力は今のチームにとって絶対に必要だ。今や梅野はセ・リーグナンバーワン捕手。球団史をひもといても、梅野レベルの生え抜き捕手が何人いただろうか。1日現在で打率2割9分2厘、2本塁打と打撃も上向いている。捕手出身の矢野監督なら、その重要性は誰よりも理解しているはずなのだが…。

 最後にもう一つ指摘しておきたいのが、ここまで打率1割4分と調子の上がらない昨季新人王級の活躍を見せた、近本の扱いだ。パンチ力と驚異的なスピードを持ち合わせた近本は矢野阪神にとって必要不可欠な選手。ボーアと同様に試合で使い続けて復調を待つべきだ。しかし、四球を選べるようなタイプではなく、出塁を常に求められる1番での起用は彼にとってプレッシャーになるのかもしれない。ならばDeNAのように8番に投手を置き、9番で起用してはどうか。広島も昨季はケガと不振にあえいだ田中広を復調した今も8番に据えている。上位打線につなぐ“影のチャンスメーカー”として近本に働いてもらうのも悪くない。

 今季は交流戦もなく、レギュラーシーズンは従来の143試合から120試合に減った。はやる気持ちも分からないではないが、1966年から96年まで130試合制だったことを考えれば、決して短い戦いではない。今は辛抱の時だ。