完全復活の時は遠くはなさそうだ。新型コロナウイルス感染で戦線離脱していた坂本勇人内野手(31)が、2週間ぶりに実戦復帰。一時の「陽性」判定で開幕目前の大事な調整に大きな狂いが生じたが、実はデメリットばかりでもなかった。主将の離脱によってチーム内には思わぬ“副産物”が生まれ、ライバル球団はかえって疑心暗鬼に陥っているようで…。

 順調に回復しているようだ。坂本は16日の二軍の練習試合(ジャイアンツ球場)に「1番・DH」で先発出場し、2打席目の中前適時打を含む3打数1安打、1打点。同じくコロナからの復帰戦に臨んだ大城卓三捕手(27)は「3番・一塁」で2打数無安打、1四球だった。2日以来の実戦を終えた坂本は「久しぶりの実戦で一本打てたことは良かった。一日でも早く(一軍に)合流できるように頑張ります」とコメントした。

 両選手は17日の二軍戦にも出場予定で、一軍合流の時期について原辰徳監督(61)は「自分(坂本ら)の中でゴーサインというところが非常に重要だと思います。こちらも焦らせることなく、しっかりと調整して戻ってくるという形で伝えています」とした。

 開幕を目前に約2週間の戦線離脱。調整の総仕上げの段階での10日間の“長期入院”は本人だけでなく現場にとっても想定外の事態だった。もちろん、コロナ離脱しないに越したことはないのだが、実はマイナス要素ばかりでもなかったようだ。

 それは不運に見舞われたのが、他ならぬ「主将・坂本」だったこと。チームスタッフは「キャプテンが突然いなくなり、特に若い選手たちには自立の意識が芽生えたんじゃないか」という。坂本はチームの絶対的な束ね役であり、戦力としても唯一無二の存在だ。その坂本がかねて危機感を抱いていたのが、若手を中心とする選手個々に「リーダー意識」が物足りなく映る点。しかし、今回のコロナ離脱が図らずもチームの“劇薬”となり、G戦士たちの尻に火をつけたわけだ。

 一方、ライバル球団の中にはかえって警戒を強めるチームもある。入院期間中に坂本にブランクができたことは間違いないが、ある球団関係者は「入院していたからといって、ずっとベッドで寝っ転がってジッとしていたわけがない。病室で素振りをしたり、やれることの最大限のことはやっていたはず」とし「やっぱりマークは外せないよ」とポツリとつぶやいていた。

 ドタバタ感は否めないものの、主将が望むチームの意識改革が進み、他球団への“煙幕”にもなったならば…。坂本にとっても救いかもしれない。