巨人に小中学生を青田買いプラン 47都道府県にOBスカウトを配置

2020年06月16日 11時00分

【広瀬真徳 球界こぼれ話】間もなく始まるプロ野球公式戦を前に先日、興味深いニュースが目に留まった。巨人がOBの力を借りて国内に埋もれる「金の卵」を発掘する試みを始めることだ。

 球団発表によれば、従来のスカウト活動とは別に日本各地のリトルリーグやシニア、ボーイズで指導する巨人OBと契約。順次エリアを拡大しながら、3年後をメドに全国47都道府県に「OBスカウト」を配置して地方に眠る逸材の獲得につなげるという。

 これまでプロ球団のスカウトといえば主に高校生や大学生、社会人、独立リーグ選手が対象。中学生以下の選手は一部例外を除き軽視されがちだった。その慣習を逆手に全国津々浦々に散らばるOBを活用しながらローラー作戦を繰り広げる巨人のスカウト活動。他球団はどう見ているのか。

 あるパ・リーグのスカウトは「資金力のある巨人だからこそできる業。ウチの予算や人脈、人員では絶対に無理ですよ」と早くも白旗を掲げる。その上で「もしこのスカウト網が数年後に機能し始めたら近い将来、全国にいる逸材を巨人に根こそぎ持っていかれる。今から対抗策を練る必要があるかもしれない」と警戒感を示した。

 他方「恐れるに足りない」と腰を据えて構えるのがスカウト経験のある別球団の幹部だった。

「確かに地方には我々が見つけられないようなダイヤの原石がいる。そうした子供たちを早期に発掘すれば将来的なチーム強化につながるでしょう。ドラフトで『隠し玉』として獲得することもできますしね。ただ、今の世の中はIT化が進み、どんな片田舎に住む小、中学生でも逸材であれば何らかの情報は入ってくる。そうでなくとも、ユーチューブやSNSを通して勝手に紹介されることもありますから。巨人のブランド力や影響力が今以上に日本全国の少年野球に浸透する可能性はあるでしょうが、巨人が人海戦術をとるなら、ウチはITを駆使して全国に網をかければいいだけのこと。何も心配はしていませんよ」

 少年時代から巨人OB指導者に目をかけられればその分、子供たちが将来プロに進める確率は高まる。巨人にとっても指導者が長年密着することで選手の個性や人間性を把握できるため、選手、球団双方にメリットがあるように見える。ただ、若年期から有望選手に注目したところで、高校、大学等で頭角を現せば他球団も獲得に動く。逆指名制度が復活しない限り、巨人が若い有望選手を独占することは難しいだろう。

 そんな状況下であえて自軍人脈をフル稼働させる球界の盟主の試み。果たして成果は見込めるのか。数年後のドラフトでその“成果”を見てみたい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。