「一軍で投げるだけで脅威ですよ」

 パの某スコアラーが渋い表情でつぶやいた。楽天・岸孝之投手(35)のことだ。

 岸は11日に西武との練習試合(メットライフ)で先発。腰の張りで3月中旬から二軍調整だったため、およそ3か月ぶりの実戦登板だった。その影響があったのか、2回途中3安打1失点、47球で降板した。

 岸にとって試運転だったとはいえ、この内容ではすぐに開幕からの先発ローテーション入りは難しい。本人も降板後「練習、ブルペンでしか投げてなかったが(試合は)そこにはないものがあった」と前向きに語った一方「(今後の課題は)試合で投げるスタミナだったりですね」と細部調整の必要性を強調しただけに、まだ時間はかかりそうだ。

 しかし、前出のスコアラーは「開幕直前のこの時期の登板はパの他球団に無言のプレッシャーになる」とこう続ける。

「楽天はすでに則本、松井裕、涌井の先発3本柱が万全で、そこに昨季急成長した石橋や昨季9勝の辛島、プロ2年目左腕の弓削など先発候補がゴロゴロいる。今後その中に遅かれ早かれ岸が加われば、手がつけられなくなる。今回の登板は楽天が周囲に『岸はもういけるよ』とアピールしたようなもの。短いイニングの調整登板だったとはいえ、他球団に向けて十分すぎるけん制になったはずです」

 パ球団の多くは開幕直後から始まる連続6連戦に向け先発陣を揃えることに四苦八苦している。そんな状況を尻目に「テスト登板」で早くも他球団を威圧した岸。プロ通算125勝右腕の再始動は、内容以上に深い意味があったと言えそうだ。