【取材のウラ側 現場ノート】「野球の神様に“見つけてもらう”んじゃなくて、こっちが“見つかる”くらい練習せんといかんのかなって思います」

 言葉の主はソフトバンク・柳田悠岐外野手(31)。球界屈指のスラッガーは、プロの世界で生き残るために一番大事なものは「運」だと説く。その運を引き寄せるのが「日頃の行い」で、それを差配するのが「野球の神様」だと信じている。「(人と同じように)普通に練習しとったら(神様は)気づいてくれない」との考えから、さらに一歩踏み込んだ柳田流の行動指針が冒頭の言葉だった。

 この一連の話をしてくれたのは、2018年シーズン開幕前のことだった。柳田がかねて「野球の神様に認められた人にしかできない」と語っていたのが、運の要素が強いとされる「サイクル安打」だ。くしくもその偉業は、同年4月21日の日本ハム戦(札幌ドーム)で達成された。敵味方関係なくファンからの祝福に応える柳田の姿を見て、妙に納得したことを覚えている。

 自宅や遠征先の宿舎にバットを持ち帰り、素振りを繰り返すのは当たり前。真冬のシーズンオフは日が昇る前の早朝から誰もいない球団施設に来て、一人黙々とトレーニングをしている。野球界に限らず成功者の多くは“見える努力”は当たり前で、その先の“見えない努力”を積み重ねている。その中でも「神様に見つかる」ほどの圧倒的な努力をさらに重ねられる者が運をつかむと、柳田は信じている。

 新型コロナウイルスの影響で学校の休校措置や分散登校は長期化し、多くの企業でリモートワークが増えた。予期せぬ事態に、おのおのの行動が他者には見えにくい日が続く。これまでの日常が戻るには、もうしばらく時間がかかるだろう。

 人目につかない孤独な環境ほど、自分を律するのは難しい。運を引き寄せられる人間であれるか。弱気になりそうな時、ふと柳田の言葉がよみがえる。