【コロナ危機を乗り越える プロ野球界にまつわる飲食店の現状】先行きが見えない。広島の1980年代黄金期を支えたOB・長内孝氏(62)も不安をあらわにしている。広島市西区のJR新井口駅近くで居酒屋「カープ鳥 おさない」を経営し、多くの来店客でにぎわっていたものの新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな打撃を受けた。

 4月18日からテークアウトのみの変則営業を余儀なくされ、現在も継続中。「2月ぐらいから団体客のキャンセルが出始めましたね。4人以上のお客さんがなかなか来てもらえない状況になった。8人とか10人ぐらいのキャンセルが軒並み続いた影響もあって3月は30%減、4月は80%減。最初はそうでもなくどこか人ごとのような感じだったけれど、広島市内でもクラスターが発生したりして危機感がかなり強まっていった。だから今の営業は“お持ち帰り”だけです」と長内氏は厳しい窮状を打ち明けた。

 広島県が緊急事態宣言の対象地域から外れ、自粛ムードも徐々に緩和される見通しは立ちつつある。それでも長内氏は楽観はしておらず、シビアな見方を崩そうとはしない。仮に通常営業に戻したとしても、政府の専門家会議が提唱する「新しい生活様式」が逆に足かせとなってしまい「やっぱりね、最初の客足は伸びないと思う」と分析している。

「お客さんにせっかく来てもらっても“なるべく話をしないように”とか、それはなかなか難しいことですよね。それに間隔を空けてもらうため、店は人数制限もしなければいけないでしょう。そういう雰囲気の中で食事をしたり、お酒を飲むことに集中してもらうのはかなり無理がある。それに完全に終息してからでないと万が一、感染者をお店から出してしまったら迷惑をかけてしまう。それではいけない」 

 プロ野球界は最速で6月19日の開幕を目指しているが、決定には至っていない。同店もすべての焼き鳥メニューに所属するカープの主力選手たちの名前をそれぞれ付けてシーズンごとに必ずアップデートしているが、今季は開幕を迎えていないためいまだ昨季のままだ。

「カープだけではなく全部の球団が同じく苦しい状況になっている。難しいとは思うが、いつ開幕してもいい準備だけはしてほしい。我々もそうだけど何とかお互い、頑張っていきたいですね」

 最後に長内氏は前向きな言葉とともに“打倒コロナ”を誓っていた。