球史に残る超乱闘 ビーンボール発端に両軍入り乱れ…

2020年05月16日 11時00分

山崎(右)に殴りかかるガルベス。ナゴヤ球場は騒然となった

【球界平成裏面史(24)、96年・長嶋巨人VS星野中日(1)】平成のプロ野球史の中でも平成8年(1996年)の長嶋巨人と星野中日の争いほど、殺伐とした雰囲気が漂った戦いはなかっただろう。

 95年オフに2度目の中日指揮官に就任した星野監督は、沖縄キャンプから巨人へのライバル心をむき出し。ブルペンに落合博満、松井秀喜に見立てた等身大の落合人形とゴジラ人形を設置し、内角攻めの練習を敢行するなど強烈なデモンストレーションを行った。

 当然ながら開幕から両軍の争いはヒートアップ。4月16日の対戦で前の打席に本塁打を放った中日・コールズが巨人・西山にぶつけられると「巨人がああいう汚いことをやるなら、こっちもやってやるよ。10倍、20倍にして返してやる。一番怖がっているヤツ(落合)にやってやる」と星野監督は報復をにおわせ、巨人と中日の間には一触即発ムードが出来上がった。

 それが爆発したのが5月1日、ナゴヤ球場での直接対決だった。5回表に中日・小島が落合に死球を与えるとナゴヤ球場は一気に不穏な空気に…。そしてその裏、中日・山崎の打席で衝撃的なシーンが展開される。自軍の4番がぶつけられたことに怒り心頭の巨人先発・ガルベスが、山崎の頭部めがけて豪速球を投げつけたのだ。

 倒れながらなんとか避けた山崎だが、ヘルメットのほんの数センチ上を通過したビーンボールに激高。前日も巨人・岡島にぶつけられていただけに山崎がブチ切れるのも無理はない。そのままマウンド上に詰め寄ると、ガルベスの左ストレートを食らいながらも強烈なヘッドロックでお返し。一塁側と三塁側ベンチから全員が飛び出し、グラウンド上では山崎、ガルベス、長嶋、星野両監督、落合、長嶋一茂、大豊ら両軍入り乱れての大乱闘劇が始まった。

 スタンドからはなぜか大「星野コール」が湧き起こり、乱闘の輪の中ではあちこちでつかみ合い、怒鳴り合い。中日・島野ヘッドコーチと金村がバットを持って輪の中に加わろうとすれば、巨人・土井、淡口両コーチがそのバットをもぎ取り、外へ投げ捨てる。後にプロ野球珍プレー好プレーの乱闘シーン特集で必ず放送されることになる大バトルは全国のお茶の間に生中継された。

 騒動の発端となったガルベスと山崎には退場処分が下されたが「なめとる。あんなバカ外人! とにかくなめとる、日本の野球を、あのバカは」と山崎の怒りは収まらない。さらに死球を与えていないガルベスが退場させられたことを不服とした巨人サイドは、メンバー全員をベンチ裏に引き揚げさせ試合は30分以上中断。これに対して星野監督も「遅いよ。今度はワシが引き揚げるよ」と審判団に抗議するなど大荒れの展開(試合は巨人が5点差で勝利)となった。

 球史に残る乱闘劇。それでも星野監督は「これも野球のうちや」と涼しい顔だった。だが、この試合から4か月半後、東京ドームで行われた巨人戦で監督人生の中で最もブチ切れる瞬間が訪れようとはこの時は知る由もなかった。