メジャー時代から食通だったAJ トークを落とす技術も天才的!?

2020年05月16日 11時00分

2月にはキャンプ地の宮崎でラーメンに挑戦したジョーンズ。球団公式インスタグラム(@orix_buffaloes)から

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「ジャパニーズBBQでおいしいとこ、どこ? 平野(佳寿投手)をコリアンBBQに連れてったらすごくおいしくて、今度は日本式の店に行こうと思って!」

 昨季、ダイヤモンドバックスのクラブハウスで数年ぶりに会ったアダム・ジョーンズは矢継ぎ早にこう話しかけてきた。

 そうだ、この人はこんな人だった。距離や時間を感じさせない彼の対応にホッとしながら、以前にニューヨークで韓国焼き肉に誘われて行った先が日本の「牛角」だった話をすると「そいつは米国人だろ? だから味の違いが分からないんだ」という独特の言い回しも健在だった。アダムも米国人なのだが「俺か? 俺はブラックだ。自分とこの文化と味は知っている」と意に介さない。

 彼は「リスペクト」という言葉に重きを置く。以前「野球選手としての責任は何か?」と聞いたら「契約をリスペクト、チームをリスペクト、家族をリスペクト、象徴するものをリスペクトし、一生懸命働くこと。僕はリスペクトされたいんだ。この野球というアートをする人間として。僕は勝ちたい。もし優勝できたら、その街では永久不滅(の存在)になる。1つだけでいいんだ。1つだけでいいから勝ちたい」と真顔で答えてくれた。

 一見ぶっきらぼうに見えるのに、この手の話題になると自分の意見をストレートに語ってくれる真面目さは、例えばロッカールームで見かける私服が襟付きシャツが多いことや彼が選ぶ言葉などから垣間見える…はずなのだが、この日はサンフランシスコで行ったという「Omakase」なる江戸前すし店の話題に尽きた。

 まずは携帯で写真を見せながら「見てよ、この店の広さ。すごく狭いでしょ!? このクラブハウスよりも狭い!」。カウンター14席とテーブル4席の店で、米国では確かにあまり見かけないサイズ。日本では珍しくないかも…と伝えると「俺には新しいことだよ! 見てよ、このあん肝!」。

 うれしそうに見せてくれる写真のあん肝は実においしそうで、これをアダムが食べられるのかと感心しながら「なかなかの舌をお持ちで!」と返すと「本気でまずかったよ! 食べたけどね」と笑いもせずに言う。

 まずかったの?と笑うと、別のお造りの写真を出して「これはなんだか分からないけど、おいしかった」と満足そうにほほ笑む。

 次々見せてくれる写真に何度もゴクリとつばを飲み込みながら「そんなに食通だったとは」とポロッとこぼすと、アダムは心外だと言わんばかりに「Ohhh Yeahhhhh!!」と目を丸くした。「ここは300ドルで20貫出してくれる。ウニにも挑戦したよ、初めてね!」

 ここまでくると、次にくる答えは分かったようなものだが、目をキラキラさせて話すから今度こそおいしかったのかと思った。「ノー、えぐかった! あ、これおいしかった。トリュフが上に乗っているスシ」

 アダムはすごくエキサイティングに話題を振っておいて落とす天才かもしれない。そして何事もなかったようにフォローも入れる。「(ウニは)また食べると思うよ。隣のやつがおいしそうに味わって食べていて、このおいしさが分かるまでには少し時間がかかるって。日系人の友人にも同じこと言われた。だからまた食べる」

 あれから半年…アダムがグルメだと知ったこの日の会話をすっかり忘れていたが、オリックスに移籍した彼の日本向けインスタグラムでラーメンをズルズルとすする姿を見て突如思い出した。本当にグルメだった。

(礼儀的な点と習慣的な面から、ラーメンをすすりながら食べる米国人は少ない。あと、テークアウトで麺が伸び伸びになってしまったラーメンを持ち帰る感覚をなんとかしてほしい…)

 アダムの日本での活躍を心から期待している。日本のおいしいものを心置きなく食べられる日も早く戻って来ますように――。

 ☆アダム・ジョーンズ 1985年8月1日生まれ。34歳。米国・カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。188センチ、98キロ。右投げ右打ち。2003年のドラフト1巡目追補(全体37位)で指名されたマリナーズに遊撃手として入団。05年に外野手転向。06年7月14日のレンジャーズ戦でメジャーデビュー。08年にオリオールズにトレードされ、翌09年から正中堅手に定着。同年からダイヤモンドバックスに移籍した19年まで11年連続2桁本塁打を記録した。メジャー通算1939安打、282本塁打、945打点、97盗塁。守備にも定評があり、ゴールドグラブ賞を4度受賞。19年オフ、2年総額800万ドル(約8億8000万円)+出来高払い200万ドル(約2億2000万円)でオリックス入りした。