実況アナウンサー・師岡正雄氏が感じたアスリートのすごさ

2020年05月03日 11時00分

実況席での山本昌氏(左)とのツーショット。師岡氏もこんな日常が戻ってくる日を待ち望んでいる(本人提供)

【コロナに負けるな!有名人の緊急事態宣言】普通の生活がどれだけ尊いことなのか――。新型コロナウイルスの感染拡大で各方面へ自粛要請が続く中、一昨年にニッポン放送を退社し、現在はフリーアナウンサーの師岡正雄氏(60)はそれが改めて身に染みているという。「3密」を避けることが徹底され、ラジオ局を含めた放送業界の業務形態も様変わりを余儀なくされている。数々のスポーツ中継での名調子で知られるベテラン実況アナに「STAY HOME」への向き合い方とコロナ禍にあえぐ社会について聞いた。

 仕事場が激変した。主にスポーツの実況アナとして37年間、名調子を響かせてきたにとっても「初めての光景」だった。新型コロナウイルスの感染防止対策で、通い慣れているはずのニッポン放送内スタジオフロアはまるで別の場所のようになった。

 ブース内には向かい合って座るパーソナリティーの間に飛沫感染を防ぐため、アクリル板が常設された。放送中の出演者以外は全員にマスク着用が義務付けられ、入室時の手洗いやうがい、アルコール消毒、検温も欠かさず行わなければならない。生放送スタジオには紫外線照射殺菌装置を導入するなど、かなり入念な対策が講じられている。現在は携わる番組スタッフの人数も必要最低限に絞られ、半数近くになっているという。

 本来であれば、プロ野球の開幕と同時に師岡氏も各球場の放送席に座って解説者とともに試合の実況をするはずだった。しかし開幕延期によって今も球場ではなく“様変わりしたスタジオ”へ通う日々が続いている。

「シーズンオフのような感じですが、もしかするとそれよりも制約が大きいかもしれないですね。何せ今はどうしても取材現場に行けないので電話が中心になってしまう。だから野球関係の情報収集はネットがベースになりますね」

 率先して自ら動き、本人から直接話を聞く。それが師岡氏のモットーであり、これまでもずっと実践してきた。それだけに現場へ足を運べない状況には歯がゆさも感じているようだ。しかし、国難となっている新型コロナショックを乗り越えるためと考えれば、素直に受け入れられる。

「仕事の日以外は自宅ですね。録画した番組やオンラインで映画を見たり、あとは(ラジオが聴ける無料アプリの)ラジコを聴いたり…。家を出るとしたら日用品の買い物か、もしくは3日に2日ぐらいの割合でなるべく人がいないランダムなルートを選びながら、マスクをつけてウオーキングするぐらいです」

 こうした日常を過ごしながらも、やはり現場で顔を合わせてきたプロ野球の選手たちのことは常に気にかかる。「スタートが決まらない中で自分を追い込まなければいけないわけですから、大変だろうと思います。これだけ我々がストレスを感じている中で、それでも自分を高めていかなければいけない。本当にアスリートたちはすごいと感じますね」

 終息に向かう気配が見えにくい現状には多くの人たちと同じように不安も覚えている。政府や行政に向けて、こんな本音ものぞかせる。

「PCR検査をもっと迅速に受けられるような態勢を整えてほしいなという思いはあります。これまでもニュースで報じられているように、検査を受けられず自宅で亡くなってしまったケースが実際にある。家に家族がいなくて1人暮らしの人はどうするのかなと」

 そして最後に師岡氏は「この自粛の生活によって、当たり前にできていたことが否定されるようになってしまった。今までは特に何も考えていなかったが、普通の生活がどれだけ尊いことなのか。それを思い知らされたなと思っています」と神妙に語った。 

 ☆もろおか・まさお 1960年2月15日生まれ。東京都出身。明治学院大卒。83年4月、九州朝日放送に入社。アナウンス部に配属される。93年3月付でニッポン放送へ移籍。同年からプロ野球中継と並行し、Jリーグ中継の実況を担当。93年のサッカーW杯アジア最終予選、日本対イラク戦「ドーハの悲劇」や97年の同アジア第3代表決定戦、日本対イラン戦「ジョホールバルの歓喜」などの大一番も現場から伝えた。MLB中継でも野茂英雄や松井秀喜の現地専属パーソナリティーとしてリポート。2018年1月にニッポン放送を退社。現在はフリー。

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