コロナ禍は常勝軍団・ソフトバンクにも甚大な影響をもたらしている。それは「育成王国」の優位性を揺るがす由々しき事態だ。

 千賀、石川、大竹、甲斐、牧原、周東。いずれも育成入団からチームの主力に成長した面々だ。いまやホークスにおいて、この出世パターンは驚きでも何でもない。

 他球団のフロント関係者らは「ソフトバンクが優秀な選手を輩出する理由は、充実した三軍制にある」と口を揃える。

 広いスカウト網を駆使し、主に一芸に秀でた選手を育成ドラフトで獲得。充実した施設、経験豊かな指導者を配し、原石を磨き上げてきた。中でも育成システムにおいて現場、フロントの共通認識として、最も選手が伸びると実感しているのが「場数」の多さだ。三軍戦だけで年間90試合前後を組み、選手の課題や成長速度に応じて出場機会を割り当てるなど、個々に緻密な強化方針を立てている。「場数」において、育成選手を限られた二軍戦の中で起用するのとでは比較にならない。

 だが、現下のコロナ禍の影響で「場数」が日に日に奪われている。3月下旬以降の大学、社会人相手の試合が流れ、四国ILとの定期交流戦もすでに4月の試合がすべてなくなり、5月中旬に予定されている試合開催も極めて厳しい状況。6月に予定している韓国遠征も中止が濃厚で、10試合以上が削られることになりそうだ。

 それだけに球団内からは「選手は数多く試合に出て、経験を積んでこそ伸びる。このままなら試合数は例年の半減もあり得る。三軍制の優位を生かせない。育成において、試合減は非常に大きな問題と捉えている」との切実な声が上がっている。

 様々な運命を翻弄するコロナ禍。原石の台頭を阻まれては、常勝軍団にとっても死活問題だ。