【取材のウラ側・現場ノート】独特な言葉のチョイスとユニークなキャラクターで“宇宙人”“超人”と称される阪神・糸井嘉男外野手(38)だが、屈強な肉体に包まれた内面には繊細な部分が潜んでいる。記事のチェックも細かく、意外と神経質で人間っぽい。あれだけの実績とキャリアを誇りながらゲンをかつぐ純粋な一面もある。

 オリックス時代、ある時から糸井と試合前練習中に京セラドームの通路でハイタッチをするようになった。ただのあいさつのノリだったが、記者とハイタッチした日の試合は打撃も好調。しなかった日はバットも湿りがちとなることに糸井が気づき始めた。「おっさん(記者のこと)、すごいわ。俺の女神や」と目を丸くし、だんだん儀式的なものとなり、こちらにも使命感がわくようになった。

 さらに試合後、翌日の活躍を祈念した試みも始まった。当時、球団は福良監督の「福良」を英語に置き換え「ハッピーグッド」とPRしており、それを糸井のニックネームにもじって「ヨッピーグッド!」。試合後の駐車場で2人で叫びながらハイタッチを繰り返し、記者が行けない時は電話口で「ヨッピーグッド!」をしたこともあった。

 好調を維持するための重圧もあっただろうし、ケガとの闘いもあった。そんな中で少しでも安心感を求めていたのかもしれないが、深夜の駐車場でおっさん2人が子供のように大はしゃぎ。それを楽しめる糸井は、やはり大物なのだろう。

(西山俊彦)