台湾の六角精児が緊急ルポ 台湾プロ野球なぜ開幕できた?

2020年04月22日 11時00分

昨年のプレミア12以来の本紙登場となった雷明正記者

 日本球界にとっても“打倒コロナ”のヒントにつながるか。台湾プロ野球が12日に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中、無観客ながら開幕を迎えた。NPB(日本野球機構)、そしてMLB(米大リーグ機構)も今季開幕のメドが立たず現状は白紙のまま。世界に先駆けてプロ野球リーグ戦のスタートを切った中華職業棒球大連盟(CPBL)の裏側と台湾国内の社会情勢について、台北在住のスポーツジャーナリスト・雷明正記者が本紙に緊急ルポを寄せた。

 なぜ、台湾球界は開幕することができたのか。それはまず、台湾政府が今年1月の時点から感染防止対策の施行に踏み切っていたからだ。

 未知のウイルスの危険性を重く受け止め、水際での蔓延阻止に乗り出し、中国、そして感染拡大が一時顕著になっていた韓国などからの渡航者を、いち早く制限した。

 そしてたとえばマスク購入に関しても政府が一括管理するシステムを整え、台湾ではスマホのアプリ「eマスク」を使えば、誰でも苦もなく入手できる。市場の混乱はなく、何より台湾には2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大で辛苦を味わった経験がある。

 台湾のウイルス封じ込めはおおむね成功している。14日は3月9日以来、36日ぶりに新規感染者数でゼロを記録。19日こそ台湾海軍の軍艦内で21人が陽性反応を示すニュースが伝わってきたものの、これはレアケースで市中蔓延は防げている。実際に合計の罹患者数は422人、死者数も6人(20日現在)と2桁に届かない。日本や米国、欧州と大きく現状が異なっていることはお分かりいただけるだろう。

 こうした社会および経済情勢に大きく助けられ、CPBL、そして台湾プロ野球リーグに属する5球団は当初3月14日だった開幕予定日から2度にわたる延期を強いられながらも悲願のスタートに踏み切ることができた。もちろん今も油断することなく、厳しい感染防止対策を徹底させている。

 選手やスタッフ、関係者への毎日の検温や消毒などは当たり前。特筆すべきはCPBLの指導の下で各球団が所属選手らの日常の行動を厳格にチェックし、把握できている点であろう。

 ちなみにCPBLの全5球団(昨年6月に再加盟した味全ドラゴンズについては20年シーズンに限り、3月17日開幕の二軍公式戦のみでの参加)では所属選手を自軍の寮で生活させることが通例だ。日本のプロ野球とは違って現役全選手が対象で、結婚すれば妻や子らと生活可能な家族部屋も用意される。現在、CPBLと球団側は全選手、スタッフ、関係者に「不要不急の外出禁止」を通達しており、違反者には重い罰則も科されている。つい先日の話だが、CPBLは4月上旬に国内旅行に出かけた若いスタッフに2週間の自宅隔離を通達した。

 台湾では政府が外出自粛を要請しているわけでもなく、国内旅行ならば自由に行くことは可能だ。だがCPBLは「模範となるべきプロ野球選手、その仕事に携わるすべての者はより厳しい環境下で感染防止に努めなければいけない」という考えを厳守させている。

 開幕したとはいえ、ビジターのチームは公共交通機関を使わずに全員が同じバスで移動。宿泊する場合もホテルでは外出を一切禁じられる。ファンとの接触はもちろんNGで、我々取材陣ともソーシャルディスタンスを常に確保。選手はまるで修行僧のような毎日だろう。とはいえ、おのおのが「このご時世に野球ができる喜び」を感じているから頑張れている。

 当面は無観客試合が続くが、球団によってはキラリと光るアイデアも目立ち始めてきた。楽天モンキーズは、スタンド4席分を1セットで通常よりも格安価格で販売し、購入者が自分の顔写真と応援メッセージを掲げられるような独自のセールスを開始した。客席にロボット応援団も常設させるなど“アフターコロナ”を見据えた球団運営にも注目が集まっている。

☆らい・めいせい=1987年6月25日生まれ。台湾・台北市出身。2015年に台湾メディア大手「三立新聞グループ」に入社し、編集兼スポーツ番記者として活躍。18年に中国系メディアで経済番記者を務めた後、19年に今日新聞(NOWNEWS)へ。同紙でスポーツ番野球担当として健筆を振るい、現在はフリーに転身して活躍の場を広げている。「最も日本プロ野球に詳しい台湾人記者」として知られ、幅広い人脈を生かした鋭い分析とともに辛口トークも持ち味。「台湾の六角精児」との異名も持つ。