ソフトバンク・周東“鬼足”の原点は網走生活

2020年04月21日 11時30分

昨季はチームトップの25盗塁をマークし、ホークスで“出世街道”をひた走る周東

【恩師が語る「鷹戦士ここがすごい!」】驚異の俊足で「侍の秘密兵器」としての地位を確立したソフトバンク・周東佑京内野手(24)。2017年の育成ドラフトで2位指名され、常勝ホークスの門を叩いた男の礎はいかにして築かれたのか。東農大北海道オホーツク時代の恩師である東農大・樋越勉監督(63)に、スピードスターの原点を聞いた。

 今や説明不要の“鬼足”で頭角を現し、入団2年目の昨春に支配下昇格すると、すさまじい勢いでステージを駆け上がった。主に途中出場ながらチームトップの25盗塁、日本代表デビューを果たした「プレミア12」では世界一に貢献し、盗塁王のタイトルを獲得。天性の脚力でスター街道に乗り、今季はチームでの定位置取りに燃えている。

 侍ジャパンの稲葉監督も熱視線を送る24歳は、いかにして才能を育んできたのか。「原点」に迫るヒントは本人の言葉にあった。「網走に行って野球をやらなかったら、僕はプロにはなれなかったと思います」。この春、再会した恩師に告げた感謝の言葉だ。

 自我が強くない性格を見抜き、あえて主将に抜てきして内面の成長を促した恩師こそが樋越監督だった。「(初見の印象は)とにかく線が細くてね。でも足は一級品で、内外野どこでも守れるところにセンスを感じた」。群馬・東農大二高の1年時からその素質にほれ込み、網走行きを説得。そこから師弟関係が生まれた。

 プロに17人を送り込んできた名伯楽はこう懐かしんだ。「ひと言で言うと“くそ真面目”な人間。プロというのは二癖も三癖もないと生きていけない世界。素質があっても心配になるくらいでした」。毎日、口酸っぱく「お前はプロに行くんだぞ」とハッパを掛け、志を持たせた。「天然」で「闘志が表に出ない」タイプ。生き馬の目を抜くプロの世界で、性格がアダとならないか気掛かりだったからだ。

 だが「網走という最果ての地が周東を育んだ」と樋越監督は言う。北緯44度、流氷が接岸する「凍る海の南限地」は例年、最低気温マイナス15度まで冷え込む。豊かな自然環境の一方で、野球をやるには厳しい環境に囲まれる。樋越監督は「都会に比べて娯楽も少なく大きな町でもないので、網走に来た目的意識がはっきりしていた。4年間野球に打ち込む理由を365日、網走の環境が提示してくれた」と言う。「狭い町ですのでプライベート情報はすぐ私の耳に入る。だけど、周東が女の子とデートをしていたとか、浮ついた話を聞いたことは一度もなかった。あの顔ですからモテたでしょうが、性格的に隠れて行っていたとも思えない。本当に野球一筋。環境に感謝するあたりが彼らしいですね」

 練習以外では地元農家や水産加工会社でアルバイトをして、1人35万円かかるキャンプ資金を毎年捻出。極寒の地ゆえに合宿に出なければ強くなれないチーム事情と「親に負担をかけない」という大きな理由があった。周東をたくましく育みプロへの道を切り開かせた「網走生活」。恵まれたファーム施設を有し、NPB随一の育成システムを誇るソフトバンクで、網走からやってきた叩き上げの男が、わずか2年で台頭したのは必然だったのかもしれない。

☆しゅうとう・うきょう=1996年2月10日生まれ。群馬県出身。179センチ、66キロ。右投げ左打ち。1年目にウエスタン・リーグ盗塁王を獲得。昨春測った30メートル走のタイムは3秒86。「人類史上最速」と称されるウサイン・ボルト氏が世界記録を樹立した際の30メートル到達時点タイム3秒78に迫る“鬼足”。50メートル走は5秒7で、一塁到達タイムはメジャーでもトップクラスの3秒8。昨秋「プレミア12」で盗塁王を獲得。鷹の超人・柳田をして「(現役最強馬)アーモンドアイより速い」。今季チームでは正二塁手取りに挑戦。来夏の東京五輪で侍入りを目指す。