完全復活のその先は――。日米通算170勝の巨人・岩隈久志投手(39)が悲願の実戦復帰へ、じわりじわりと歩を進めている。春季キャンプではブルペン投球もままならず、原辰徳監督(61)もがっかり。しかし、ここにきてグンと状態が上向いたか、14日の個人調整ではバッテリー間の距離ではないもののフリー打撃に登板した。もちろん、待たれるのは実戦での投球だが、実は期待されることがもう一つあるという。

 往年の制球力は健在だったようだ。14日はマウンドの前から黒田、加藤脩の若手2人へ計50球。久々の打者へ向けた投球を終えたベテランは「打者への感覚をつかめたし、これからブルペンで強度も上げて高めていきたい」とコメントした。

 2017年秋に手術した右肩のコンディションが上向かないまま昨季を終了。10月には鼠径(そけい)ヘルニアの手術をした。今春のキャンプでもブルペンで変化球を交えた投球こそ行ったが、本格的な投球練習には至らず。寒さに加え、岩隈が最も大事にする投球フォームのバランスも整わないまま本来の開幕日、3月20日を迎えていたが、その状況は一変しつつある。

 早々の一軍昇格は現実的ではないにしても、シーズン開幕が大きく遅れていることで、事実上「大幅に遅れた復帰」ではなくなる。チームにとってもプラス材料だ。実戦復帰へ日々前進する岩隈の姿は一、二軍の投手陣にとって大きな支えになるはず。仮に順調な歩みでシーズン終盤での一軍復帰を果たせれば、過密日程必至の先発陣の救世主にもなり得る。

 そもそもが日米通算170勝を挙げたレジェンドだけに心強い限りだが、チーム関係者の期待はもう一つある。それは指導者としても、だ。「長いリハビリ、若手と接してきた期間が長かったこともあるかもしれないが、岩隈は教える側への興味が出てきたみたいなんですよ」とはチーム関係者。その“証拠”なのか、別のチームスタッフが感心した様子
でこう語った。

「リハビリ組で一緒に練習してきた野上が、岩隈の教えもあってか、ボールの質が格段に良くなっているんですよ。投球に力みがないうえに、ボールの伸び、回転が違う」。昨秋、左アキレス腱を断裂。岩隈と同じく今季中の実戦復帰を目指す野上にも好影響を与えているという。

 存在感だけでなく、指導面でもひそかに注目を集める背番号21。9年ぶりのNPB一軍のマウンドの復帰が、今度こそ期待される。