野球の知識は拡大せよ――。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って東京など7都府県に緊急事態宣言が発令され、東京を本拠地とする巨人は12日までだった個人調整期間が「当面の間」と延長された。開幕どころか全体練習がいつ再開できるかも分からない状況で、選手たちは自宅にいる時間が増えた。そんなGナインに元木大介ヘッドコーチ(48)は“宿題”を課し、野球脳も鍛えるよう促している。

 ジャイアンツ球場では密集状態を避けるため一、二、三軍でそれぞれ2勤1休のローテーションを組み、個人調整が行われている。球団は改めて選手に練習以外では不要不急の外出をしないよう指示し、多人数が出入りする飲食店や繁華街への出入りを強く禁じた。

 当然、Gナインは自宅で過ごす時間が長くなった。ただ、そんな今だからこそ集中してできることもある。元木ヘッドコーチは「野手はスコアラーさんにどんどん聞いてほしい。具体的にはセ5球団の正捕手の配球の傾向。他チームを見れば、正捕手はほとんど決まっている。5捕手の配球のクセが分かれば打率は上がる」と野手に“宿題”を課した。

 昨季の巨人では主に3捕手を併用し、それぞれ先発マスクの回数は小林68試合、炭谷41試合、大城30試合だった。一方で他球団に目を向けると、阪神・梅野の121試合を筆頭にヤクルト・中村が110試合、広島・会沢が102試合といずれも3桁台。骨折で1か月以上の戦線離脱があったDeNA・伊藤光も80試合、中日・加藤は75試合で先発マスクをかぶっている。二兎、三兎と追わず、一兎だけを徹底マークするメリットは十分にありそうだ。

 さらに元木ヘッドコーチは「投手についてもスタメン以外の選手は相手のローテ投手を研究しても仕方がない。セットアッパーの2番手、3番手の方が代打として対戦する可能性が高い。そこを研究してほしい」とも訴える。これは自身の経験に基づいた考えでもあった。

「(1990年のドラフト1位で)巨人に入ったらショートに川相さんがいてとてもかなわなかった。そうこうしていたら(FAで)他チームの4番打者がどんどん集まってきた。その中で自分が生き残るには何をしたらいいか考えた」。その結果が、控え選手として対戦する可能性の高い投手を“狙い撃ち”することだったという。

 いみじくも原監督は、球団を通じて8日に発信した動画メッセージで、全国の野球少年に向けて「こういう機会だからできることはある。シンキングベースボール。考える野球をするということもとても重要」と語りかけた。それはプロ野球選手も同じことだ。