朗希 同じ剛腕でも大谷やクレメンスとは一線を画す幻惑フォーム

2020年04月06日 16時30分

しなやかな佐々木朗の投球フォーム

【球界こぼれ話・広瀬真徳】最近の球界といえば暗い話題ばかりが目立つ。2月中旬に突如舞い込んだ野村克也氏の訃報に始まり、3月は新型コロナウイルスの関連ニュースが席巻。度重なるシーズン開幕延期の報を聞くたび、一介の球界関係者としては心が痛む。

 それでも明るい話題がないわけではない。ロッテ・佐々木朗希(18)の順調過ぎる調整ぶりである。先月24日と27日にZOZOマリンで行われた2度のフリー打撃登板。ネット裏からの視察だったが、改めて並の投手とは次元の違う特徴が見て取れた。投球フォームによる「幻惑」だ。

 通常、160キロ近い速球を武器にする剛腕投手のフォームは力強く、見ていて迫力がある。過去にロジャー・クレメンスや大谷翔平(エンゼルス)のブルペン投球を至近距離から確認した経験があるが、いずれのフォームも威圧感が半端なく、打席側から見ると恐怖すら感じる。当然、投じられる球も威力十分で、ネット越しでも1球ごとに思わずのけ反ってしまう。これが剛腕の典型的な特徴だろう。

 ところが、佐々木朗は違う。体全体のバネを利用しているからだろうか。常時150キロ超えの速球を投げ込むフォームに良い意味で「力感」がない。そんなフォームから剛球が繰り出されるため、打者は始動やタイミングを早めても見た目との差に惑わされる。その結果、打者の打球が詰まり気味になるのだ。

 実は春季キャンプ中に吉井投手コーチに投球フォームについて聞いた際、こんな話をしていた。

「普通の投手なら速い球を投げたくなると、どうしても自然に力が入る。でも、彼(佐々木朗)はそう感じさせない。もう体で(投げ方を)覚えているのでしょう。あのフォームから強いボールを投げられたら、打者は驚くと思いますよ」

 これまでの剛腕とは一線を画す独特の投法。これが彼の魅力であり武器でもある。その片鱗を打撃投手で見せつけたのだから周囲の期待が高まるのも無理はない。

 公式戦開幕への道のりはいまだ不透明ながら、佐々木朗はこの延期を利用して直球、変化球の精度に磨きをかけられる。例年にない十分な開幕前の準備期間は間違いなく高卒ルーキーにとってプラスに働くだろう。

 2度目のフリー打撃登板後、「まだ抜けてしまうボールがあったりする。これから打者との対戦を重ねて修正していきたい」と今後の課題を口にしていた18歳右腕。微調整を終え万全の状態で開幕を迎えたらこの怪物はどんな投球を披露するのか、興味は尽きない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。